重ねる
 彼奴は愛の形を知らない。だから探した。試行錯誤を繰り返しながら、何度も失敗して何が本当なのかもわからないまま、探した。幼い時の彼奴は甘やかされるそれが愛の形だと思い、その愛に身を委ねた。だが、それは彼奴を満たす愛ではなかった。では、何が愛なのだろうか。彼奴は考え、次の行動に移した。甘やかされるだけでは駄目だったから、甘やかしてみた。そしたら、相手が駄目になった。またしても探している愛の形とは違うものが手に入った。では、甘やかすだけでは駄目なのなら、相手の望みを汲んで動くようにしたらどうだろう。そうして相手のことを考えて、相手の望むように動いたら、物事は全てうまく動くようになった。これが愛の形なんだろうか。自他がうまくコントロール出来るこの状態が、愛と言うのだろうか。彼奴は気付いている。これも、違う。でも、どうして、なんで、自分が人が手に入れるような激情を、熱情を手に入れられないのか、与えられないのかが分からない。沢山、恋をした。沢山、傷ついた。それでも、望んでいるものが手に入らない。そもそも愛とは何か。知らないものを探したって、与えられたこともないものを見つけようなんて、そんなの無理じゃないだろうか。彼奴は考える。そうして、諦めようとして、できなくてもがいている。

 馬鹿だな、と思う。

 俺は彼奴を抱きしめて、愛していると甘やかす。俺は彼奴の胸にすり寄って、愛してと甘える。彼奴のことを思い献立を考えて料理をし、帰ってきたら疲れてるかもしれないからと風呂を沸かす。たまに口論になって傷ついて、仲直りしては彼奴が好きだと再認識する。繰り返し繰り返し。彼奴だって同じように。繰り返し繰り返し。お前が探した愛を二人で一つずつなぞっては、確認する。
 ねぇ、なんでオレはお前といるとこんなに“愛”してるって思うのかい?こんな気持ちになるのは初めてで、お前とずっといたいなんて、こんな、正直オレも混乱してるんだ。途方に暮れた子供のような顔をして彼奴が言う。だって、こんな気持ち知らない。
 
 馬鹿だな、と思う。

 そうして俺は触れるだけの口付けで、その答えを教えるのだ。
 
50.重ねる

(俺に愛の形を教えたのはお前なんだぞ、神宮寺)


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君は愛の代名詞。

2012.02.28


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