偶像崇拝のなれの果て
 ふと振り返れば同じことを繰り返していた、と言うのは誰の人生においても往々にしてある経験だ。それはルーティンワークかもしれないし、本来なら繰り返すことがあってはならないミスかもしれない。そもそも人の思考は柔軟ではないから考え自体が型にはまっているのだろう。だったら同じことを、どんな些細なものでさえ繰り返してしまうのはしょうがないことじゃないかと思う。ああ、まるで自己弁護だな、と付け加えるのも忘れない。成長したいという願いは持ち続けている。

 「珍しく静かですね、青峰君」
 「…バスケの後にごちゃごちゃ言う体力なんざねぇよ」

 ふと、現実に引き戻されて汗が額を伝った。タオルはいつの間にかだらりと首にかかっている。スポーツドリンクには雫が浮かび、熱に浮かされた頭を冷やすのに調度良さそうに見えた。どうぞ、と控え目な声で渡されたそれを首に押し付けた。

 「サンキュな、黒子」
 「はい」

 一度は道を違えたはずの“相棒”と、今こうして会っているのも似たようなものなのだろうか。ぐちゃぐちゃに放られたタオルを畳みながら、黒子は相変わらず何も言わずただ俺の横に座っている。
 小指の爪ほどもない人生を振り返れば、ストリートから始めた俺がバスケをより好きになったのはコイツと出会ったからで。一度は失いかけていたバスケへの熱情を思い出させてくれたのも、やはりコイツだった。つまりは繰り返し。黒子に出会う度バスケにどんどんのめり込む自分がいる。キーパーソンというには余りに存在感がなく、影と言うには俺にとっては些か濃過ぎるような、そんな奴だと思う。
 
 「きっと、神様がいるならお前みたいな奴なんだろうな」
 
 人の人生に飽きもせずにちょっかいを出しながら、その実それに意味がないようなふりをする。いてもいなくても変わらないように見せながら、もしもと奇跡を期待させる。繰り返し繰り返し、振り返れば確かにそこにいるような存在を、神と呼ぶのなら。

 「そう思わねぇ?」
 
 黒子はまるで意味が分からないと怪訝そうに眉を寄せる。きっと中身全部を話しても同じような顔をして―――心中では大層困り果てて―――言うのだろう。

 「僕がそうなら、青峰君だってそうですよ」

偶像崇拝のなれの果て

 (結局俺は成長できないまま、二人でこの循環に沈むことを望んでいる) 


  
――――――――――
 
 神様よりお前の方がずっと近い。
 そんなことを考えているポエマー青峰君。

 2013.02.18



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