「ヘカテ女史、こっちの棚は終わったが」

「こちらも終わったわ。ありがとう、カロン」

「礼なんて大した事はしてないだろ?まぁ、女史の頼みは断れないから気にすんな」

「あら?それじゃあ、これからはもっと色々頼もうかしら?」

「お手柔らかに頼む」

「ふふ、考えとくわ」

「…なぁ、聞かないのか?」

「貴方が蔵書室(ここ)に来て、珍しく私の手伝いをしてる理由?それとも拗ねてる理由かしら?」

「どっちも、だ」

「悪戯したのだから、お仕置きは当然じゃない。でも、拗ねてる理由はそうじゃない。でしょ?」

「…主だって休めばいいんだよ。部下が来ないなら仮眠でも何でも。全く…」

「仕方ないわ。貴方のやり方上手くないもの。でも、気持ちは伝わってるんでしょう?」

「分かってて働くから質が悪い。彼奴は休まないだろ。例え、タナトスの仕事を遅らせようが、俺が手間をかけさせようが気にしない。しかもだ、俺達が心配しているのにも関わらずだ」

「それが私達が彼を愛する理由でしょ?」

「同時にもどかしく思う理由だ。理解しているなら、少しは考えて欲しいんだが」

「本当に危ういのよね」

「危う過ぎる。だからこそ次の作戦に移れるけどな」

「懲りないのね」

「懲りないねぇ。主を黙らせるため、もとい休ませるためなら」

「…全く。後で薬草庫に寄って、あと、私の手伝いをして。そしたら、薬を作るわ」

「んじゃ、おれは厨房でケーキでも作らせるか。まぁ、とにかく、奥方が帰ってくるまでに一回は倒れてもらわないとな」

「そうね…無茶ばかりしたら、奥方が悲しむことに気付いて頂きましょう」




戯れに、企み




「…女史、新薬だけは止めてくれよ?」

「あら、残念」

「思ってもない顔で言わないでくれ…」



2010/11/23