「やっぱりさ、小さい頃の女の子の夢と言えばお嫁さんじゃない?しかも誰のって“パパの”お嫁さん!“パパの!“ここ重要だから二回言っとくよ!それを踏まえて可愛いかんわいー愛娘のエイレイテュイアとへべに聞きたいんだけど、小さい頃誰のお嫁さんになりたかったんだい?」

「お父様、ご期待に沿えられなくて申し訳ないのですが、へべはアレスお兄様のお嫁さんになりたかったです」

「…アレス!?」

「だって幼い頃はいつも一緒にいて下さいましたし、私が泣くとぎゅっとして下さって、それは紳士然としていたんです…王子様のように見えましたもの。私の初恋です!」

「うっ、そ、そうか…エ、エイレイテュイアはどうだったんだい?」

「…お父様、私も申し訳ないことに、あまり結婚というモノに期待を抱かなかったので、そういうことを考えたことがなくて…でも、」

「でも?」

「結婚するならヘパイストス兄様のように人情家で他人の痛みが分かる、優しい方に嫁ぎたいです」

「うっ、何で二人ともパパよりお兄ちゃんなんだ…!パパだって確かに若さは足りないかもしれないがダンディズムに裏打ちされた格好良さに溢れてるし、野郎はともかく女性に関しては超が付くほど紳士だぞっ!心もこの空のように広いことは一目瞭然じゃないか!なのに何故…!」

「それで浮気癖がなくて、我が子ともちゃんと時間を取っていたら、“お父様のお嫁さん“が聞けたんじゃないのかしら?ねぇ、貴方?」

「へ、ヘラ…」

「まず、始めの理論から間違っていますわ。だって小さい女の子の夢が皆お嫁さんだなんて…少なくとも私は父親に一度食べられた身ですもの。お父様のお嫁さんなんて考えたこともないですし。やっぱり、父親が録でもないと娘は父親に幻想なんて抱かないのかもしれないですわね、ええ、きっと。少なくともエイレイテュイアとへべはそうみたいですし。ああでもおかげで二人が変な人を連れて来る心配が減ったからよかったのかしら。二人は見る目があるのね。問題があるとすれば強引な野郎とか無理矢理襲おうとしてくる野郎とか姿形を変えてまでヤりたい野郎とか、かしら。あとは、」

「あ、あのう…ヘラさん」

「そうね…貴方みたいな方とか?」



正午1分前の断末魔


「…今、俺、母様に兄貴を見たよ。あの辛辣な言葉攻めと言葉遣いは兄貴とそっくりだ。つか、兄貴が母様に似てるんだったっけ。容赦ない所とかツンデレ(いや、巷ではヤンデレって言われてんだっけ?)具合も似てるっていうか、うん。にしても、目の前の昼食がまずくなりそうなくらい物々し過ぎるんけど。まぁいっか。母様大好きだしな、俺」

「俺は大神にお前を見たんやけど。他人の話は聞かへんわ、勝手な前提で話し出すわ、無意識に他人の神経逆撫でするとこなんてめっちゃそっくりやん。ウザいっつーか、まぁ阿呆やな。てか死ねや阿呆。俺はツンデレやないっつーとるやろうが、てめぇは脳みそないんかい。はよ去ね。さっさと去ね。」

「無理。今昼食べてんの。しかも雰囲気関係なく美味しいの。幸せなの。でもさ、俺思うんだけど。父様のことで確実に言えんのはさ、」

「「自業自得だ(や)ろ」」