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※乙女()が(乙女)ゲームみたいな恋したい!と思いながらクロロ(♂)として生きる話
ヒソカの語尾のマークは「◆」で統一させていただきます。見えない方はどうぞ心の目でご覧ください……。
突然始まる原作沿い




突然だが、オレには夢がある。それは恋愛アドベンチャーゲーム、所謂乙女ゲームのような恋愛をするということだ。一応言っておくとオレの性別は男だ。ただ前世が乙女ゲームのような恋愛に憧れていた女だというだけで、オレの性別は男だ。大切だからもう一度。オレは男だ。(オレという一人称も矯正した結果見事に癖になってしまった)
まともな恋愛もすることなく青春真っ只中で事故死という悲惨な前世を終えると、オレはゴミ山で一人佇む少年になっていた。男だ。何度も言う、男だ。
つまりたった一人の相手から身を焦がすような激情を注がれ甘く優しく愛されるには不向き(むしろ不可能)な性別というわけだ。……どうしてこうなってしまった。
前世が夢見る乙女()だったせいで未だに恋愛対象は男だ。ちなみにこれは親友兼姉のようなパクノダにも言ったことがない。たった一人の相手が男でなくてはならない(オレの心情的に)という面から見ても、どう考えてもオレはホモなのであった。……どうしてこうなった。いっそホモでいいから甘酸っぱい恋をめざしてみようか。

……ああ、あと忘れてはいけないことがある。オレが生まれ変わった少年というのが、某少年誌で連載中の狩人の恐ろしく強い集団の団長だったということだ。ゴミ山に一人で放り出されていたときは驚いた。いや、それもあるが一番は死にたくなった。なんだってすごく汚い。オレはそれに耐え切れなくなって、そこにはたくさんの孤児がいた中で慕ってくれる奴らを連れて流星街を出た。現在は(なぜか)盗賊団の団長をしている。ここまで見事に(たぶん)原作と同じ状況。

「いらっしゃい!」
「ステーキ定食を弱火でじっくり」
「!……奥の部屋に行きな」
「こちらです」
「ああ、ありがとう」

定食屋に入って合言葉を口にすると店のおやじさんが奥の扉を指差した。これ、部屋に見えるけどエレベーターなんだよな。どんだけ金使ってんだよハンター協会。案内してくれたウェイトレスさんににこりと笑えば可愛い顔を赤く染めそそくさとカウンターへ戻っていった。さすがクロロの顔。オレは自覚したイケメンほど性質の悪いものはないと思うんだ。
それにしてもハンター試験を受けるための合言葉に妙に憶えがあるのだが気のせいだろうか。まあいい。きっとすぐ思い出すだろう。今回オレがハンター試験を受けようと思ったのは流星街出身のオレが万が一の時に身分を証明できるようにするためだ。なぜもっと早くに行かなかったのかとも考えたのだが、その時は別にいいやと思ってたんだから仕方ない。まあ身分を証明するようなことになるとすると十中八九蜘蛛絡みだから証明するまでもなくつかまりそうだけど。

「番号札をどうぞ」
「ありがとう」
「受付終了までまだ時間がありますので自由にお待ちください」
「ああ」

ステーキ定食を平らげて(上品にだ)エレベーターを降りると緑色の豆のような人に番号札を渡される。ふむ、96番か。ハンター試験が毎回どれくらいの参加者なのかは知らないが、原作では最後に到着したゴンたちが400番代だったからこれからまだまだ人が増えるのだろう。とにかく、始まるまで壁際で立っていようか。

「よお、兄ちゃん!」

端まで行こうとすれば正面から声がかかった。大きなカバンを引っさげた小太りのおっさんだ。ああ、うん。こんなヤツもいたな。

「あんたルーキーだろ?オレはトンパ。お近づきの印にジュースでもどうだ?」
「間に合っている」
「そ、そう言わずによう」
「間に合っていると……っ!」

不意に感じた殺気にジュースを取り出してすすめてくるトンパを横に突き飛ばし、眼前に迫った物体を指で挟んで止める。それはハートのAのトランプだった。

「やあクロロ◆久しぶり。会いたかったよ」
「久しぶりだな、ヒソカ。オレは会いたくなかった」

ひいい!と逃げていくトンパを尻目につかつかと歩いてくるヒソカの目の前でトランプを破り捨ててやる。いくら乙女ゲームに憧れているからといってもコイツだけは御免蒙る。実はヒソカがすごいイケメンだとしてもだ。

「ふふ、つれないなア◆」
「気持ち悪い、寄るな変態」
「そういうトコロも好きだよ◆」

あああ気持ち悪いどうしてこうなった。十分話が出来る距離にきたというのに未だ歩みを止めないヒソカを睨みつける。というか、どうしてヒソカがここにいるんだ。ヒソカがいるということは原作の…………そうだ、原作じゃないか。原作のハンター試験じゃないのかこれは!?い、いや、確かヒソカはその前にも一度試験に落ちていて、原作では二回目だったから、これはヒソカの一回目の試験なのかも……!

「99番です。どうぞ」
「おーサンキュー!」

豆の人を振り返ると、銀髪くせっ毛のショタがいた。キルアじゃないですかつまり原作のハンター試験ですねなんてこったい。ということは、クラピカが……いる!?
オレはクルタ族を虐殺なんてしてないから何も後ろめたいことはないのだけれど、どこぞの馬鹿がクルタ族が滅びたのは幻影旅団の仕業だとか根も葉もない噂を流しやがったせいでクルタ族を滅ぼしたのは幻影旅団ということになっている。つまり、クラピカの復讐の矛先はオレたち蜘蛛だ。ということは、万が一にでもオレの蜘蛛の刺青が見られるとオレの人生が終わってしまうということだ。まだクラピカは念を習得していないけど警戒するに越したことはない。というかオレが恐い。

「どうしたんだい?そんなに眉を寄せたら可愛い顔が台無しじゃないか◆」
「ひっ、頼むからあっちへ行ってくれ!」
「ひどいなあもう◆」

ヒソカの舌なめずりにぞわりと背筋が冷える。とりあえずヒソカにはどこかに行ってもらって、オレはクラピカにばれないように静かに行動することにしよう。クラピカの誤解が解けたら早いのにな。そしてめざせ乙女ゲーム。




ちなみに髪は常におろしている。仕事の時だけ包帯はずす。

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テーマ「人外ファンタジー」
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