花宮成り代わりin誠凛 | ナノ


一年が仮入部してから数日が経った。ザアザアと雨の音が聞こえてくる体育館で指示を待つ。生憎の土砂降りでロードワークが出来なくなったため代わりに何をするかを話し合っているようだ。基本的には相田と日向が練習メニューを決めることになっているから今のところオレの出番はない。そろそろ一年の実力も見たいと言い出すころだろう。もう記憶も随分薄れてしまったが原作でも最初の方で五対五のミニゲームをしていた気がする。
指示が出るまでは柔軟をしていろとのお達しだ。ちなみにオレは身体は柔らかい方だと思う。思いたい。伊月と二人でペアと組んでいると、話がついたのか相田と日向がこちらへと近づいてきた。

「五対五のミニゲームやろう!一年対二年で!」

相田が早く準備しろとけしかけると一年は「センパイと試合なんて」と浮き足立っているようだった。それもそのはずか。普通に考えれば入部したての一年が上の学年と試合だなんて無茶にも等しい。……キセキの世代とか、そういう規格外の奴らは別としてだ。そして、加えてオレたち誠凛バスケ部は去年、一年だけだったにも関わらずIHは決勝リーグまで進出している。木吉の離脱などのハプニングもあり優勝こそできなかったが、数々の強豪校を抑えて一年だけでこの成績はそれなりに評価が高い。今年の一年にもそのことを知っている奴がいたのか、そういう話題が出ていた。

「それで、二年のメンバーなんだけど……」
「日向、伊月、小金井、水戸部、土田」
「あら、花宮くんは?」
「オレは見学。じっくり一年見たいしな」
「……そう」

手早く相田との相談を済ませる。どこか釈然としないような顔をしていたがオレは譲るつもりはないから諦めてもらおう。一年をじっくり見たいというのも本当だが、第一に木吉が戻ってくるまでの間、これからの戦いのメインのPGには伊月を添えようと思ったからだ。黒子が入部した今、イーグル・アイで確実に黒子の動向が把握できる伊月の方が適任だと思ったからこその人選だ。これは今日の部活後にでも相田たちに話すことにしよう。
そしてオレは花宮の高い頭脳を活かしてのスティールが得意だが、それは木吉のサポートでほぼ100パーセント成功というレベルにまで達している。今は木吉が入院中で本来の力を出せないこともあって、しばらくは伊月中心で原作通り、誠凛特製のラン&ガンを磨いていければと思っている。もちろん、オレも試合には出るつもりでいる。
ちなみに、なぜ木吉にオレの考えが理解できるのかはわからないが、本人によれば「愛の力」らしい。オレは木吉の野生の勘だと思う。

相田と並んでコートを見つめる。落ち着いた様子の二年はプレッシャーは感じていないようだ。一年も「相手は弱いより強い方がいいだろ!」と火神に鼓舞されやる気を出している。

「どう思う?」
「……火神と黒子だな、とりあえず」
「火神君はわかるけど……黒子君も?」
「あいつは、特殊だからな」
「うう〜ん……ま、見てればわかるわよね」

黒子を推した理由は主人公だからというのももちろんあるが、以前一度帝光中の試合を見たことが大きい。すいすい通るパスはまさに魔法で、オレも一バスケプレーヤーとして魅せられていたからだ。
整列した十人を見渡す。今オレは黒子のことを意識して見ているからかろうじてまだ視界には入っているが、きっと他の奴らには認識されてもいないのだろう。忘れられているともいう。

相田がボールを上げる。ジャンプボールを制したのは火神だった。火神はそのままドリブルで切り込み開始早々、一発目のダンクをかます。それから試合運びを黙って見ていると火神ひとりに二年が押されてきた。一年だけでIH決勝リーグは伊達ではない。それだけの実力は一応備えている。にも関わらず押されているのはやはり火神の力が大きすぎるのか。未だ普通のプレーをしているためかボールをスティールされ放題の黒子にイライラが爆発寸前の火神が次々とダンクを決めていく。

「……そろそろか」

まあ、いくら火神がすごいからと言っても、一年相手に負けっぱなしは趣味じゃない。オレは組んでいた腕を解き右手を掲げる。指を擦りスナップ音を響かせれば伊月、小金井、土田がボールを持った火神にトリプルチームでディフェンスを仕掛けた。



back
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -