花宮成り代わりin誠凛 | ナノ


憎たらしいほどの日が俺の肌を刺す。こうも空が青くて太陽が燦々と輝いていたら何もしたくなくなる。そうやってついつい注意が散漫になるが歩いている最中では危ないだろうと意識を戻す。小さい頃、移動中に呆けていて電柱にぶつかったことがあるのだ。あれは本当に天才児かと疑いたくなるようなドジだった。

今日は二度目の高校生活の二回目の二年生進級日だ。二度目というのはまあ突拍子もないことだが、オレはいわゆる転生とかいうものをしてしまったようで。そのせいで二回目の高校生だ。まあそれについては追々話すとしよう。
駅から学校までの道のりは徒歩10分というところだ。それなりの場所にそれなりの店が揃っているから特別不自由はないところで、中でも学校の近くにマジバーガーがあるのはすばらしいことだ。オレも部活帰りにチームメイトと寄ってはチョコシェイクを頼み、毎回変わらないチョイスに部員たちが苦笑していた。日常を思い返しながら、楽しそうに喋る男子グループを黙々と追い越して行く。進級日、つまり始業式だから部活の朝練はない。よっていつもより登校時間が遅いから生徒がたくさんいるというわけだ。たまに歩くのが遅いくせに横に並んでいる奴らを見ると某方ではないが轢きたくなってしまう。

「おーい!花宮!」

物騒な思考を中断させるかのように呼ばれた名前に歩を止めてくるりと振り返る。この声は伊月だろうから、伊月と家が近い日向も一緒だろうか。視界に目当ての人物を納めれば案の定伊月と日向だった。

「おはよう。伊月くん、日向くん」
「ああ、花宮おはよう」
「おう。つかその突然の猫被りモードどーにかなんねーの?」
「ふはっ、無理だな」
「はは…相変わらずだな」

軽く挨拶を交わして三人で並んで歩き始める。先ほどの男子グループと同じような隊列だ。並ばれるとうざいけれど並びたくなるというのは不思議なものだ。四人なら二人ずつでどうにかなるが三人はだめだ。二列になると一人になった奴がハブられた気になる。

「花宮って凶悪顔と猫被り顔の落差がすごいよな」
「それは言わねーって話だぜ」
「男はハートで勝負ってか」
「ハッ!ハトのハートはハートフル!!キタコレ!」
「ねーよ!」
「審議するまでもねーな」

正直に言うと伊月のダジャレはひどいというレベルを軽く凌駕している。残念なイケメン、否ダジャレ王とは正しく彼のことを指すのではないだろうか。見たか、これが誠凛高校バスケ部一(推定)のモテ男だ。日向も日向で男前なのに戦国時代のことになると途端にスイッチが入る暦オタだ。そのせいかうちの部は残メンの集まりなのかと疑いたくなる。でもやはりイケメンだからか二人と合流してから視線が増えた気がする。そういえば花宮もイケメンというか美人だった。

「さーて、とりあえずクラス割り見てくるか」
「同じだといいな」
「それフラグだろ」

言いながらすでに出来ていた人ごみの中から掲示板を見る。幸いなことにオレはそれなりに背が高い。バスケの強豪校なんかではもっと高い奴なんて五万といるが、一応この三人の中では一番だ。ひょいっと背伸びし名前を探す。

「お、伊月発見。A組だとよ」
「二人はC組だな。カントクもいるぞ」
「伊月だけ別かよ」

掲示板にはA組の上の方に伊月、C組の下の方に花宮、日向と続いて載っていた。
前世があるせいか花宮の性格のせいか、とにかく俺はクラスメイトとつるむのがあまり得意ではない。気の置けない仲ならばそれほど気にしないのだが、つい一年前までは中学生だった奴らと馬鹿騒ぎできる程子供でもなかった。そういうわけで今回日向と同じクラスだったというのは歓迎できることだった。伊月と離れたのは残念だけれど再度名簿を確認すると相田もいるようで、今年はイベントに事欠かないクラスになりそうだ。
去年は昼休みになると決まって弁当持参で屋上ランチタイムだったから、今年もきっとそうなるのだろう。
中学の頃の幼馴染たちや先輩との昼休みや、日を追うごとに意思疎通の図れるようになってきた水戸部と共に階段を上っていた数ヶ月前を思い出してふと笑みが零れた。水戸部との会話イベントは人間やれば何でもできると言われたような気がしたできごとだ。実際には、できないことだらけなのだけれど。



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