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鏡の中には世界がある。
とても信じがたいが、私はその世界に入ったことがある。
ファンタジーやメルヘンじゃあないんだから、と言われそうだが、実際に入れてしまったのだからどうしようもない。

このような奇妙な出来事に遭遇するのは、実に二度目になる。

日本の女子大生だった私は、ある日目が覚めるととあるイタリア人の両親を持つ赤ん坊になっていた。
転生、というやつだ。
言葉もわからず、さらには性別まで変わってしまっていた。
当然混乱したのだが、幸いなことに赤ん坊だったおかげで、何を言っても泣き声にしかならなかった。
それからしばらく経てば自然と言葉は身についた。子供の脳みそが柔らかかったからだろう。
次々言葉を吸収していく自分に半ば驚きが隠せないでいた。
性別の方もある程度時が流れれば慣れるだろう。これから一生付き合っていかなければならないのだ。
ここで"なるようになるだろう"という考えを持つのは少し楽観的すぎるだろうか。

そして話は冒頭に戻る。
ファンタジーやメルヘンじゃあないが、鏡の中には世界がある。
左右が綺麗に反転した世界だ。
私が許さない限り、誰もこの世界に入ることはできない。逆に言うと、私が許可してしまえば全てはそのとおりになる。
つまり、この鏡の中の世界は私を中心に動いているのだ。
出入り口は至って普通の鏡である。誰が使っているものでもかまわないし、どんな大きさでもいい。
とにかく、鏡というものなら何だって内側の世界へと通じる出入り口になる。

ここまできて思い当たった。
私は生まれ変わる前、すなわち前世でこの能力が出てくる漫画を愛読していたのだ。
ジョジョの奇妙な冒険というその漫画は、読んだことは無くとも名前くらいは聞いたことがあるだろう有名な漫画だ。
例にもれず、タイトルだけ知っていた私も友人に薦められてどっぷりと嵌ってしまっていた。
その第5部に出てくるイルーゾォという暗殺チームの敵キャラが、正しくこの鏡の能力を所持していた。

そして私の今現在の名前も、イルーゾォ。
いつの間にか常に私の傍にいた、何やらゴーグルのようなものを掛けている人型の、けれど決して人ではない何かも漫画で見たことのあるものと同じで。
おそらく"マン・イン・ザ・ミラー"という名前であろうこの能力の根源はイルーゾォの"スタンド"である。
つまり、私は漫画のキャラであるイルーゾォに成り代わってしまったのだ。


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