――…………。 「……少し、失敗してしまったね」 真っ白な空間に、声が響く。 「ふん、気にする必要などない」 「君は相変わらずだね」 答える声は語調の強さに反して柔らかい音を発している。 それにくすりと笑みが漏れてしまって、相手がむ、と顔を顰めた。 「いくら――だからといって、気を使ってやることもないだろう」 「それでももう少しくらい、どうにかしてあげられたかな」 「……助かったのだからいいだろう、なぜそこまで気にかけるのか……理解に苦しむな」 君の力と合わせるタイミングが掴めなかったのだと零すと、彼は余計に表情を険しくしてしまった。 少しだけおもしろいと思う。 「あはは、それでこそ僕、でしょう?」 「それでこそ……か。くだらんな、いいかげん、見捨てるべきだ」 「あと少し、もう少し……約束までは、まだ猶予があるよ」 彼の表情は戻らない。それほど深く憎しみを抱いているのだ。 けれど僕は信じると決めていた。愛しい彼らを。 「ようやく探し当てたんだから、少しくらい待ってよ」 軽い調子で投げかける。 「……もう彼奴らの勝手な都合に付き合うことはないはずだ」 重い調子で返ってくる。 「僕もいま、彼を自分の勝手な都合でこちらの世界に引き寄せた」 「癪だが、それはこちらの世界の奴らの為なのだろう?」 「それでも彼の人生にとって、こっちは本来関係のないものだからね」 ――もしもすべての歯車がうまく噛み合ったのなら、そのときはお詫びとして、元の世界に返してあげよう。 そう提案すると彼は諦めたように、苦汁をなめたように呟いた。 「……おまえは、優しすぎるのだ」 「ありがとう。君も、優しいよ」 にっと口を釣り上げて笑うと、彼は姿を消してしまった。 unknown ← |