人生イージーモード | ナノ







――焼けるような赤が、飛び出した。

「ギ、ァァアッ」
「おとなしくしていろ」

何が起こったのか。
今まさに私を撃ち殺そうとした男の首から、カミソリがあふれ出す。
突然現れた男はそう言って倒れた男の手から落ちた銃を手に取り、私と同じように事態を理解していないもう一人の男に向ける。

「ぁ……あぁぁ」
「悪く思うな。任務なんでな」
「く、来るな!来ないでくれ!」

さっきまでの余裕はどこへ行ったのか、情けなく震え上がる男に、やつは容赦なく発砲した。
大きな振動が私の鼓膜を叩く。思わず目を瞑ってしまって、はっと顔を上げる。
一瞬で二人の男を殺してしまった男は、私を一瞥して何も言わずに背を向け歩き出した。

私は去っていく男の姿を思い出した。
黒いコートにインナーは着ておらず、黒のベルトのようなものが鍛え抜かれた大胸筋のあたりで交差されている。白黒のボーダーのパンツに"R"が左右反転されたバックルのベルト、そして真っ黒で特徴的な頭巾。
黒に囲まれた、血を連想させる赤い虹彩に彩られた整った顔。細い銀糸が、黒だらけの中で一層存在感を放つ。
私はこの男を知っていた。
そして、この男こそ、私のこれからに繋がるキーパーソンだ。

(――みつけた)

声には出さずに呟く。
リゾット・ネエロ。何かの間違いでなければ、彼は恐らく、後の暗殺チームのリーダーになる男だろう。
これでいよいよここがジョジョの世界であることが確定された。されてしまった。

いいかげん、ちゃんと身の振り方を考えたほうがいいかもしれない。

「とりあえず……鏡の中に隠れよう」

派手な銃声が響いたし、きっともうすぐ警察がくるだろう。この状況を見られるのは得策ではない。両親がいないからと施設に入れられる。ないだろうとは思うが下手をしたら刑務所だってありえなくない。
だから一先ずは避難だ。鏡の中に入ってしまいさえすれば、だれも私を見つけられない。

男たちの死体を超えて鏡に近づく。手をかざすとガラスに張り付いたアルミニウムが波紋を作った。
ゆっくりと手を入れ、そのまま全身でもぐりこむ。目を開けると、部屋は左右反転していた。
ほっと息を吐く。

……まずは今後をどうやって生きていくか。暗殺チームに入るまでは、本当にしっかり考えなくてはならない。
見たところ、父の身分証はコピーだったし、きっと本物はまだ向こうのアジトにあるのだろう。こうなると私は何度でも狙われることになるだろう。
ガキを一人殺しにいったら返り討ちにされた。なんて血の気の多いギャングは黙っていそうにない。

実際に殺したのは私ではなくリゾットだが、男たちの組織がそれを知る由もない。
おそらく姿を知られてはいないだろうが、もし奴らに私の顔を知ることのできる能力のスタンド使いがいるのなら、あまり外を出歩くべきではない。特に、アバッキオのムーディー・ブルースのようなスタンドがいるのなら。
その場合、私の能力まで知られることになる。もっとも、私の能力が知られたところで、逃げる分にはあまり支障はないだろう。
鏡はそこかしこにある。行動できる範囲だって、原作では数100メートルだと設定されていたけれど、なぜかキロ単位で移動できる。
逃げることはたやすいだろう。ただ、油断はしない。

心苦しいのは、きっと盗まないと食べていけないだろうということだけ。




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