小ネタ | ナノ


0610 00:39




やって後悔しないのとやらずに後悔しないのならやって後悔しない方を選ぶ。
なぜならその方が格好いいから。




生まれ変わったら性別が変わっていた。
前は立派な男だったというのに、なぜか自分から見ても可愛い女の子になっていた。好みのタイプかと聞かれればそうではない。なぜなら顔が自分だし、背は低く百七十には到底及ばないからだ。自分は背の高いカッコイイ女の人が好きである。それにしても、世の中不思議なことがあるもんだ。死んだあと記憶を持ったままで生まれ変われるのも変な話だけどな。

歳は十四。身長は以前とさほど変わらず、少し小さくなったくらいだ。髪は死色にばっさりと切られてしまう前と同じくらいの長さで、下で一つにまとめている。当然のごとく、斑模様である。右頬の刺青も健在でおおよそ十四の少女の風貌ではないだろう。重々承知している。けれども、これもまあ《一週目》の影響だろう。


ところで――
そう切り出したのは目の前の金髪だった。

「おまえ何であんなとこに倒れてたんだよ」

長い前髪のせいで目が隠れ、表情は口元からしか伺えない。目の前の金髪――少年はモンブランのケーキをつつきながら言う。隣の黒いフードを被った赤ん坊―同じくケーキをつついている―もそうだと言わんばかりにこちらを伺う。二人の出す怪訝な空気と場の和やかさはまったくと言っていいほど噛み合わなかった。


「んー、……腹へっててよー」
「……あの状況の中、それだけの理由で寝るのかい?」
「クソ兄貴に追われてて碌に寝てなかったしな」


眠たかったんだよ、と零して俺も目の前のイチゴの乗ったショートケーキに取り掛かる。ふんわりとしたスポンジにたぷりの白い生クリーム。甘すぎることもなく、かといって甘くないわけでもない絶妙な甘さのクリームは俺の甘党な舌でも文句ない味だった。まあ俺としてはもう少し甘くても何ら問題はないけどな。そしてその上にちょこんと乗った真っ赤なイチゴがまた甘酸っぱくて、生クリームとの相性が抜群だ。数日前にも同じものを食べたがあれは本気でうまかった。


「だからって死体に囲まれて寝るかよ」
「しかも君が殺したんでしょ?」
「まあな。あいつら、なんでか知んねーけどいきなり襲ってきやがって」
「よく無事だったね」
「俺がフツーじゃないのはよく知ってるだろ?特にベルとか」


俺の言葉を聞くと、モンブランを口に運んでいたベルは途端に口を歪める。目元は見えないがあまりいい気分でないことは確かなようだ。


「ゲッ、んなとこ引っ張ってくんなっつの」
「まあ確かにベルがあんなにあっさりと負けたのは初めて見たからね」
「え、マジで?」
「カッチーン、王子ムカついちゃったー」


ベルは素早くナイフを投げつけてくる。丸いテーブルに向き合って座る俺たちの距離は限りなく近い。こんな距離でナイフを投げる奴があるか!
とは言ってみるものの俺からするとそこまで速いわけではないから普通に避けられる。頭を少しずらしてナイフを避ける。ナイフはそのまま後ろの壁に突き刺さった。


「避けんな!」
「避ける!」
「ほんと、君みたいな女の子、滅多にいないだろうね」
「そ?さんきゅ」
「別に褒めたわけじゃないんだけど」
「つかそー言うおまえみたいな赤ん坊もいねえよ、マーモン」
「だろうね」


ケーキを口に放り込みつつ、ベルのナイフを避ける。俺が言えたことじゃないけどベルも相当ナイフを隠し持ってるみたいだ。今思えば獲物は同じなんだよな。俺の場合はこれといって決まったわけじゃないけど、まあ基本はナイフだからな。マーモンは……なんだっけ、幻術?まあ呪い名みたいなもんか。

数日前、俺はとある理由により兄貴から逃げていた。一日でも一箇所に留まろうものなら翌日には追いつかれている、というのはすでに体験したことだ。本当めんどくさいことこの上ない。
おまけに今度は国外逃亡したら黒服の連中に絡まれるし。どんだけ運がないんだ俺は。とりあえずいつものようにレンアイしたあと、どうしても眠くてそのまま倒れこんだ。そこをベルに発見されたというわけだ。

その後はとんとんと話が進んで、知らぬ間にマフィアの手伝いをさせられることになっていた。
なんでもこのヴァリアーという組織はイタリアンマフィア、ボンゴレファミリーの暗殺部隊だそうで、近々ファミリーの跡取り合戦が行われるらしい。それに、俺も参加させられるみたいだ。リング争奪戦という七つのリングをかけた戦いで、ヴァリアーはボスと幹部六人、相手は中学生中心の七人だそうだ。明らかに勝負ついてるだろ、これ。殺し名には及ばなくとも殺しのプロと普通の中学生だぜ?どう考えてもヴァリアーの勝ちだろ。

そしてなぜそこに俺が絡んでくるかというと、七つのリングの守護者以外にもう一つ役割があるからだ。詳しくは聞かなかったが俺にその守護者をさせるだとか。
しかしどこの誰とも知れない俺を使うなんて大丈夫なのか。


「なんて――戯言だけどな」
「ん?何か言ったかい?」
「いんや、何も」


まあ、俺が気にするところでもないか。






そしてリング戦ではいーたんと再開。
殺し合い真っ最中で一週目の出会いを再現するといいよ。
「えー俺いーたん殺せないしぃー」「僕はぜろりんを殺せるけどね」「いやーん愛が重い」「ところでそのキャラはなんなのさ」「いや?ノリ?」
とりあえず俺ら帰るから、ってみんなほっぽってかえるといい。

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