「好きです。」

なんて、全く言えなくて。


だって、貴方はマドンナさんしか見ていないから―



「月子先輩」


「明日空いてますか?」


「今日、星見ませんか?」



私の隣で月子先輩を口説いているのは、一年天才ルーキーの木ノ瀬梓くん。



私の好きなひと―



「あ、あの…練習しなきゃ」


オドオドしている月子先輩に対して梓くんは「あ、そうですね」と、やっと練習に戻る。



私は複雑なまま弓を放ったら真ん中どころか的にすら当たらなかった。最悪だ。



―スパンッ



隣の月子先輩が弓を放った。
さすが、ど真ん中。
それを見た梓くんがまた月子先輩に寄って誉めてた。



「先輩、さすがです」


「そうでもないよ…?」



いいな、私も誉められたい。
「さすがだね」って。


ふたりの会話を隣で聞くと涙が出てしまう。
だけど、今は部活中。
必死に想いを心の中で留める。


やっぱり、駄目だよ。
あんな仲良く喋ってるのを見てるのは―

「あの、誉先輩。体調が優れないので少し休憩しても良いですか?」


「うん、いいよ。 ゆっくり休んで。」


私は外に出て投げやりのない気持ちを溜め息で流す。


恋は先手必勝!なんて、誰かが言ってたけど…


そんなの無理だよ。


私はその場でしゃがみ込んで声を押し殺しながら静かに泣く。


―想いを伝えたい。

―好き、って言いたい。

―一緒に星を見たい。



そんな想いは虚しく私の心の中で消える。




どうしても。
(言いたい。けど、言えない。)


END







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