I'm with you2
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「それ」から数日遡って。
花言葉を教えてほしい、と悠から急な電話。
いったい何事か、と思いつつ記憶を探れば、もうすぐ恋人たちの日なのだと思い当たった。
あの変なところで少し鈍い子相手ならば、ポピュラーなものの方がいいだろうと思って、いくつか教えてやった。
ユリ、アンスリウム、チューリップ、バラ…、それにパンジーを贈るのも一般的だけど、と言い添えたら、慌てたように電話は切れた。
変なとこ大胆な癖して、照れ屋なのは二人して似ている。
「なに笑っているんですか?光乃さん」
ケータイ片手に思わず笑っていたら、キッチンから雫が顔を出した。
「…悠だよ」
ケータイを閉じると、雫は訳知り顔で、ああ、と呟いた。
「もうすぐバレンタインですもんね」
「聞いていたの?」
人の電話を立ち聞きするとか、そんなことをする子じゃないのは知っているが、あんまりにも的を得た答えに、つい疑いたくなる。
「まさか。今時季ですし、それに私も、ちょうど考えていたところだったので。」
そう言ってキッチンから出て来た雫からは、なんだか甘い香りがする。
「…チョコレート?」
「当たり。ある地域ではチョコレートを贈るんだって聞いたから、チョコレートケーキ作ってみようと思って。
今年は私から贈らせてください」
そう言ってにこりと幸せそうに笑われて、つられてこちらも笑う。
…あっちも、バレンタインには幸せであってくれたらいい。
END.
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