こげくさい愛をあげる 1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「知っている?チョコレートは昔、滋養強壮の薬だったんだよ」
ころりと皿の上に乗せられた、黒いチョコレートを転がしながらミソノは言う。
口の中でとろりと口どけ良く溶けるチョコレート。
甘い甘い、チョコレート。
「…はぁ」
煮え切らない返事を返す。
転がされていたチョコレートはミソノの手に摘まれ、今度は手のひらでころりと転がされている。
滋養強壮の薬というか、あなたそれネタにエロイ事したいんと違うんですか。
大体、大抵男がチョコレートは昔、滋養強壮云々言い出すのは昔はそういう薬だったんだよという為だ。
昔々は媚薬として扱われていた事すらあったらしい。
言った事は無いし言いたいと思ったことも無いが、長い人生で言われるなど思っても見なかった。
そういう事は若い娘さんに言ったらどうですか。
しかし、それを口に出すのは余りに自虐的だし彼もいい気はしなかろう。
厚みのある一口サイズの四角い形のチョコレート。
コノエがコンビニで買ってきた冬の新作、ガナッシュの入ったボンボン・ショコラ。
繊細なチョコレートはミソノの手の体温で溶けてきている。
甘いもの好きのミソノには、些か甘さが足りていないのかもしれない。
いつかもらった、彼が外国から買ってきたというチョコレートを思い出す。
……。
いやいや。
チョコレートの甘さはこれくらいがちょうど良いでしょう。
「あんま気乗りしてないねぇ」
ミソノは手で転がしていたチョコレートを摘んでコノエの口元へ持っていく。
それに食らいついて再度、はぁ、とコノエは煮え切らない返事を返した。
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