襲う衝動 4
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・呼吸が足らずに真っ赤になった顔に、とろんとした瞳。
唇はだらしなく緩んで、酸素を取り込むたびにぬるついた唾液が布団に染み込んだ。
けれど、ムツにはそんなことを思いやる余裕すらない。
赤い舌を引きつらせ、時折思い人の名を零れ落としながら、腰を高く上げてただ欲だけを追い求める。
端から見れば壮絶な光景だが、見るものの居ない今、この部屋に反響するのはくちゅくちゅと鳴るいやらしい水音のみだった。
「…っう、うぅぅうーっ…」
ひくん、と太ももをひくつかせて、ムツが苦しげにうめいた。固く瞑った瞳から、ぽろりとひとつ涙が落ちる。
「……いけ、ないよぉっ…」
ぶるりと背中が寂しげにゆれる。
足り、ない。
全然足りないのだ。
リードに愛しまれてきたムツの体は、彼の稚拙な愛撫だけでは、到底達することはできなくなっていた。
絶頂を目の前にして、それでも届かない苦しみに…ムツはちゅく、と指を緩めながら身悶える。
いやだ、いきたいのに。
なんで…。
これでは始めないほうがよっぽど良かった。
くる、し…よっ…。
リードくん…。
はや…く、かえってきて…ぇ。
解放を求める欲と、それを持て余す体にムツは涙声でその名を絞りだした。
「リードくん…っ」
カチャ、と。
その音が一体何なのか、ムツは最初頭が回らなかった。
が、薄く開いた扉から見えた、その見覚えがありすぎる顔を見るなり一気にとおくなっていた理性が呼び戻されるのを感じた。
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