欲望ロマンス 6
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「だから?」
上気した瞳を向けるグレイシアに、ブースターはわざとそっけない表情と言葉を返す。
グレイシアは視線を泳がせ数秒の沈黙を作り、一段と眼に熱気を宿してぎこちなく口を開いた。
「…も…もっと…最後まで…っ」
それ以上の言葉は羞恥が込み上げ、とても口にすることができなかった。
真っ赤になった顔を隠すようにうつむく愛らしいグレイシアに、ブースターは冷徹をつくろった表情を思わずほころばせる。
そして服を掴む手を優しくほどくと、棒を畳に置いて真っ直ぐ冷蔵庫へと向かっていった。
バタッとドアの開く音。
一寸の間を置いてわずかに漂ってきた冷たい風に、冷凍庫を開けたのだと気づいたグレイシアは、何のために?と疑問を抱いて顔を上げた。
──バタン
再びドアを閉めるブースター。
その右手にはビニールに包まれた真新しいミルク味の棒アイスが握られている。
「え!?なんであるのっ?」
「これでホントに最後」
「さっき全部なくなったって…」
「あれ嘘。一人でコッソリ食おうと思ってた」
「何それ?!サイテーッ!」
卑怯だ、セコいズルいと、ビニールを破くブースターに向かってグレイシアは体の火照りも忘れて吠えたてる。
それを右から左へ聞き流し、ブースターは取り出したばかりのアイスを持ってグレイシアの脚を跨いだ。
「丸々一本お前にやることにしたんだから、そんな喚くな」
「えっ…私にやるって…、っ!!」
仁王立ちになってるブースターから偉そうに吐かれた言葉の意味を理解したグレイシアは反射的に後退った。
「やっ…、いいよもう! 後で食べるから…っ」
「もっと、って言っただろ」
「あっ、あれは…!」
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