欲望ロマンス 1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・『日中の最高気温は35度。本日も殺意が湧くほどの真夏日となるでしょう』
「…あぢー」
「あついー…」
4畳半の色あせた畳の上にブースターとグレイシアは打ち上げられた巨大イカのようにでろりと横たわっていた。
窓を全開にしてはいるものの、流れてくるのは神経を逆なでするセミの大合唱ばかり。
隅に追いやられたちゃぶ台の上の扇風機は暑苦しい空気を掻き回すだけで、誠意というものをまるで感じない。
景色が揺らめくほどの熱に包まれている2人はただ寝そべって呼吸をしているだけなのに、額や首筋に球の汗を浮かべていた。
「あー…アイス食いてぇ…」
「さっき食べたばっかじゃん…」
「いや、でも食う」
「あぁっ、私も食べるっ!」
立ち上がったブースターに慌てて声をかけ、グレイシアは気だるく上半身を起こした。
2ドアの小さな冷蔵庫の上のドアを開け、こぼれ出す冷気に癒やされつつブースターは棒アイスの箱をあさる。
「あ、ヤベェ」
「えっ、何?」
「これでラスト」
「ええーっ?!昨日買ったばっかりなのに!」
愕然とするグレイシアにアイスを投げ渡し、ブースターは我先にとビニールを破いてアイスを口に含んだ。
「…あれ?」
その様子を眺めていたグレイシアが、自分とブースターのアイスを見比べてポツリと声を漏らす。
「どうした?」
「なんでブースターが苺ミックスなのっ?ずるいっ、私そっちがいい!」
← | →
[
TOP ]