愛するネズミたち 3
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「え?」
身体のバランスを支えていた手が掴む彼の肩感触がなくなり視線を下す。
視界には丸まった背中が映った。
そう認識した直後。
ぐいっと腰に感じた力で視界が高くなり、足が宙に浮く。
「わっぁっ」
腰を抱き上げられ、足首は伸ばしても床の感触がない。
落ちそうになり傍にあった首に腕を回す。
ライチュウは腕に掛る重さを感じていないかのごとく、大股で移動を始める。
「お、降ろしてよっ!いい加減にしないと怒るよ!」
「……」
度重なるピカチュウの叱咤に彼は反応しない。
今の位置からでは表情も伺えない。
あまりのしつこさに怒ったのか。
しかし、怒るのはこちらの方なのに。
不可解な行動に眉を顰める。
辿り着いた場所はさっきまで寛いでいた居間。
「あの…さ、重くない?」
「軽くはないけど」
「だったら早く…」
降ろしてほしいと言う前に、また視界が急速に動き天井が見えた。
掌で後頭部を包まれていたので衝撃はない。
こんなところだけは変に紳士を気取る男である。← | →
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