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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・エーフィは気になっていたことも聞いてみることにした。
「あの釜ってなにするためのもの?」
「ん、薬の調合とか、料理とか」
「ふ、ふーん、そうなんだ」
エーフィは自分自身も変わり者だという自覚はあったが、このブラッキーもそこそこ変わり者らしい。
「魔女みたいだね」
「魔女、ね。調合師って呼んでもらいたいんだけどね」
ブラッキーの黒いビロードのような毛並みと赤い瞳、それから寡黙そうな雰囲気はどことなく魔女を連想させるところが無いわけではなかった。
「色んなものがあるね〜」
明らかに彩度の強い怪しい液体の詰まったビンなどがいくつも棚に並んでいた。
研究者として興味が湧いてきたエーフィだったがすぐにブラッキーに注意された。
「ダメだよ、触ったりとかしたら。大事な薬たちなんだから」
「う、うんわかってる…きゃあっ!!」
「うぎゅっ むっ」
「わっ!わっ!!」
足元に散乱していた本につまづいて、エーフィはすっ転んだ。
その衝撃で周りの物がさらに散らばった。いくつかの棚の上の方にあったビンが近くにいたブラッキーの上にも落ちてきた。
衝撃で揺れていた物たちの動きが収まると、ゆっくりとエーフィは立ち上がった。
「いたたた…」
「あんまりうろうろしないでほしいな。危ないから」
きつく怒りを見せるわけでもなく、しかし無表情のまま言われると逆に迫力があった。
「うん、ごめんなさい」
ビンの蓋が空いていたものもあったようで、ブラッキーの体は液体で濡れていた。
しかし危ない物ではなくただの水みたいなもののようで、タオルで拭けば問題は無いらしい。
「これ以上何かされると困るし、それに眠くなってきたからもう寝よう。君はソファーを使えばいい。そこには何も置いてないから」
さっきのすまなさもあって、素直に言うことを聞くことにした。
エーフィも歩き疲れていたし、寝ようと思えばすぐにでも寝られそうだった。
ブラッキーはというと、明かりを弱めたあと、寝床らしきところへ行って本の山にもぐりこんでしまった。
森にきて遭った不幸と、無事助けを得られた幸運を思いながらエーフィは目を閉じた。
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