朝一番のおはよう 1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・朝を知らせる小鳥の囀りが窓越しに聞こえてくる。
覚醒し始めている意識。
起床時間であることはわかっていた。
だが、ベッドから抜け出す気はない。
コンコン―――
扉が開く音と共に彼女の声が聞こえてくる。
「失礼します」
誰かはわかっていた。
だが、入口付近から聞こえてくる声を無視して寝たふりを決め込む。
「ご主人様、おはようございます。朝ですよ」
起こすのを躊躇うような声が、少しずつ近付いてくる。
もう少し……
あともう少し……
込み上げてくる笑いを堪えながら無反応でい続ける。
「ご主人様?」
手が俺の肩を揺さぶろうとした時だ。
その瞬間を見計らい、手首をグイッと掴み引き寄せる。
「あ、キャッ」
バランスを崩した身体はベッドに前のめりで倒れ込む。
ベッドのスプリングが軋む音と共に降りてきた重みが心地よい。
俺の胸に埋まった顔を上向かせ、彼女の顔中に唇を寄せる。
口付ける度に肩を竦める反応が初々しい。
幾度となく繰り返している行為だというのにまだ慣れないようだ。
「おはよう、ザン」
「ん、ごっご主人様っ!」
戯れを窘めるような口調だが威圧感などあるわけがなく、俺は堪えていた笑いをクッと漏らす。
あまりの至近距離に少し離れようと柔らかいベッドに手をついて起きあがろうとする。
が、許す訳ないだろ?
背中に腕を回し阻む。
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