回想回帰 15
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「少しだけ、後悔してることがあるの。」
「後悔?」
「そう…。あのとき、校門で別れたとき、こんな便箋じゃなくて、ちゃんとした手紙を渡しとけばなって。」
「そ…」
俺の言葉は彼女のぷにっとした肉球に遮られた。
「うん、あのとき勇気があれば…ううん、ほんとは卒業する前に…。」
「……。」
「告白したかった(んだ(の。」
俺とエルフィの声が重なる。
エルフィは目を見開き、「え…?」と呟いた。
俺の口を塞ぐ彼女の手を取り、俺は言った。
妄想でしかなかったあの追憶を。
「今さら言うのも変かもしれないし卑怯なのかもしれない。でも俺だってホントのことが言いたくなった。
俺もエルフィに告白したかった。
君が好きだよ。って。」
「ヴァンくん……。」
「俺は意気地無しだし、面と向かって言えることもそんなにないし、エルフィが一人ってことを知ったその日にこんなこと言ってる時点で下心がバレバレなのかもしれないけど、本気でエルフィが好きなんだ。あのときも…今も。」
「ちょっと待って!!ヴァンくんばっかりしゃべらないでよ!
わたしだって、別れたばっかりで違う男の人のところへ行く不謹慎な女だよ。 でも、ヴァンくんのことは忘れたことはないよ。ずっとずっと好きだったんだもん…。」
「はははっ…」
「ふふっ…なんか…おかしッ…」
「ああ。バカみたいだよな。」
「そうだね、バカ…みたい」
俺とエルフィはしばらく意味もなく笑いあっていた。
あのとき、それを言わなかっただけで狂ってしまった俺たちだけども、離れてからの10年間が少しだけ縮まった気がして。
無駄じゃないけど、ホントにバカみたいに月日は俺たちを流した。
でもまたこうして隣にいる。
それは10年前と少しも変わらない2人だってことの証明で…。
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