18禁(表) | ナノ




回想回帰 11


俺はエルフィの制止を聞かずにさっきよりゆっくりと近づく。


「ちょ、こないでって」



「嫌だ。」




「ほ、ほんとに降りるよ!!」



「待て、コレがお前の手紙の山の中にあったんだ。
コレは誰からの手紙なんだ?」



左前足でそのハートのシールで封された青い便箋をエルフィの前にヒラヒラさせる。



「それはっ!」




「なんて書いてあるんだろ?見てもいいか?」




「だっ…だめー!!」



エルフィが柵を跨いで、俺から便箋を奪おうと必死に突っ込んできた。



手紙はひらりと後ろへ回し、エルフィをがっしと両前足で捕まえた。


そのままベランダの窓から中へ戻った。


もう飛び降りなんてさせない。



「…どうして、ひっく…ヴァンくんは意地悪なのっ?」



空っぽの青い便箋を掴まされたエルフィがすすり上げている。




そう、さっきのエルフィが自分のものだと錯覚したのは、実は俺のものだった。



いや、エルフィのものでもあったのだけれど。




中等部卒業の前日、2人でこの青い便箋を分け合った。


『この手紙はいっちばん大事なときに使うんだよ。』


エルフィはそう言った。



「いちばん大事なときに使えって言っただろ?」



「でも…何も書いてないよ?」




「ああ、書く時間はなかったけれどいちばん大事な時にちゃんと使えたぜ。」




「バカぁ…」



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