回想回帰 11
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺はエルフィの制止を聞かずにさっきよりゆっくりと近づく。
「ちょ、こないでって」
「嫌だ。」
「ほ、ほんとに降りるよ!!」
「待て、コレがお前の手紙の山の中にあったんだ。
コレは誰からの手紙なんだ?」
左前足でそのハートのシールで封された青い便箋をエルフィの前にヒラヒラさせる。
「それはっ!」
「なんて書いてあるんだろ?見てもいいか?」
「だっ…だめー!!」
エルフィが柵を跨いで、俺から便箋を奪おうと必死に突っ込んできた。
手紙はひらりと後ろへ回し、エルフィをがっしと両前足で捕まえた。
そのままベランダの窓から中へ戻った。
もう飛び降りなんてさせない。
「…どうして、ひっく…ヴァンくんは意地悪なのっ?」
空っぽの青い便箋を掴まされたエルフィがすすり上げている。
そう、さっきのエルフィが自分のものだと錯覚したのは、実は俺のものだった。
いや、エルフィのものでもあったのだけれど。
中等部卒業の前日、2人でこの青い便箋を分け合った。
『この手紙はいっちばん大事なときに使うんだよ。』
エルフィはそう言った。
「いちばん大事なときに使えって言っただろ?」
「でも…何も書いてないよ?」
「ああ、書く時間はなかったけれどいちばん大事な時にちゃんと使えたぜ。」
「バカぁ…」
← | →
[
TOP ]