回想回帰 10
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・どこだ? どこへ行った?
確実に今エルフィを一人にすると危ない。
あいつは……死のうとしていた。
リビング…いない
書斎…いないっ
俺の部屋…いないっ!
靴はあったから外へは行っていないはずだ。
と、頬を撫でる風。窓が開いている…。
いた、ベランダだ。
「どうしたんだよ、今日のエルフィ変だぞ。」
「ごめんね…でももういいの…。」
エルフィはベランダを囲む柵の向こう側にいた。
このマンションは20階建てで、あいにく俺の部屋は18階にある。
「…何があったんだ?」
「わたし…みんなを騙してる。何個も何個も嘘ついた…もう、わたしはわたしが嫌なの!」
「疲れたんだろ?嘘つくことに。」
俺は言う。
「手紙…見たのね」
「…ああ。」
「わたしなんて…生きてる意味ないでしょ…?」
「そんなことはない。」
すると彼女は柵に掛けていた両前足のうち右前足を放して言った。
「……ヴァンくんなら分かってくれると思ったのに……バカ…。」
「分かってるよ。虚しさも自分が嫌いになることも。だから、死のうなんて考えるな。」
一歩、また一歩とエルフィに近づいていく。
「止まって。近寄ったら降りるよ。」
唐突に強気になって彼女は言った。
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