純愛さながら 1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ムラムラっとくるのはいつも唐突だ。
その時もバシャーモは、ただぼんやりとルカリオの横顔を見ていただけだったのに、何の前触れもなく足の裏から震えがきてしまった。
背徳感を孕んだ痺れは、腰骨を伝って脳天を揺らし、そしてあらぬところへ熱をもたらす。
バシャーモはぶるっと身震いをした。
一度これがきてしまうと、もうダメだ。
なにがなんでも我慢がきかない。
ルカリオがそこにいるというだけで、たまらなく欲情してしまう。
「ルカリオ」
バシャーモは手を伸ばし、テレビゲームに熱中している恋人の首へ、後ろから抱きついた。
「わっ!」
ルカリオが小さく叫び、同時に画面からキィッと派手な音がする。
順調に走っていたレーシングカーが一回転して、あっという間に海に落ちてしまった。
聞き馴染みのある間抜けなBGMが流れ、暗転した画面に「GAME OVER」の文字が浮かんでくる。
それらをぽかんと眺めていたルカリオは、しかしはっと我にかえると、勢い良く振り返り、己の邪魔をしてくれた元凶を強く睨みつけた。
「バシャーモ!」
はっきりと怒りのこもった口調と視線だったのに、バシャーモは全く懲りていないような明るい声で「あのね、」と続けた。
「したいんだ、ルカリオ」
懇願するような、あるいは恍惚とした目つきだったかもしれない。
ともかく彼の瞳は甘ったるくて、ルカリオはつい鼻白んでしまった。
目の前の男は、いま、なんといった?
「聞き間違えだったら悪いんだけど」
ルカリオは、丁寧にそう断ってから訊ねた。
「ここはどこ?」
「俺の部屋」
「今何時?」
「昼の二時」
「今なんて言った?」
「セックスがしたい、ルカリオ」
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