はちみつよりも甘く 1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「はちみつ」
「ええ、蜂蜜です」
いらっしゃいませ、と遊びに来た恋人をいつもの通り居間に通していつもの通りお茶を出す。
幾度と無く繰り返した事だ。
これからも、ずっと同じように繰り返していければよいとコノエは思っている。
ことり、と座卓の上にミソノ用にと用意した湯のみと、小振りの片手で持てるサイズのガラスで出来たハニーディスペンサーを並べて置く。
中にはとろりと薄い黄金色の蜂蜜が入っている。
コノエが選びに選んで買った蜂蜜だ。
ミソノはその蜂蜜を怪訝に見たあとに湯飲みを覗き込んだ。
湯飲みの中は、いつもの緑茶だ。
「…はちみつ?」
ミソノは怪訝そうにもう一度そう言った。
コノエはそんなミソノに微笑みながら、最近…というかちょっと前から緑茶に蜂蜜を入れて飲むのが流行っているようですので。と言った。
国内では全くもって主流ではないが、どうも国外では緑茶には蜂蜜を入れて飲んでいるようではないか。
というわけで、早速お客に出すお茶に蜂蜜を出してみたのである。
ふぅん、とミソノはあまり興味がなさそうにハニーディスペンサーを持ち上げ緑茶に金色の蜜を投入した。
「この蜂蜜入れ使いやすいね」
「可愛いでしょう。ついつい購入してしまいました」
ミソノがくるくるとスプーンで湯飲みの中を掻き混ぜている。
見ていてなんだか、変な感じだ。
湯飲みにスプーン。
出してはみたものの、ちぐはぐだ。
まぁ、少しでも美味しく飲んでもらえるならそれで良いのではないだろうか。
「いかがです?」
「うーん。飲みやすい、けど微妙」
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