こげくさい愛をあげる 5
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ちら、とコノエを見やれば顔を顰めてなにやらもじもじとしている。
高潮した頬と潤んだ目が情欲を訴えているくせに口を閉ざして何やら耐えるようにしている。
意固地な男だ。
言ってしまえばいいのに。
それを望んで自身の熱を無視して耐えるミソノ自身もそりゃもう意固地だが。
こうしていても埒が明かない。
ぱちんと懐中時計の蓋を閉じ懐に戻しながら、コノエの隣へと移動する。
「ひっ!」
膝の上に手を乗せただけで過剰に反応したコノエがびくりと体を振るわせる。
「素直に言ってしまえばいいのにねー、意固地なんだから」
「あ、ああああなた、本当に今日は意地が悪いですね!」
紅緋の色の目が、こちらをじっと見てくる。
酷い男だ。
コノエが言いたくないのを解っているのに強要してくる。
薬は体に回っていて、己の衣服が体に触れるのさえ苦痛だ。
過剰に反応する。
もう、どうしようもないくらいに体の奥を燻ぶらせる熱に絶対に言うものか!そう思っていた心が挫ける。
だが、口に出すのは恥ずかしい。
もう、ミソノが欲しいと言ってしまおうと思っては見たものの口に出すのが恥ずかしくて顔を真っ赤にしてコノエは過剰に反応する体を持て余す。
時間は経てば経つほど薬が体に回る。
言おうとしては口を噤みを繰り返しついにはぽろぽろと泣き出してしまったコノエにミソノは水を向ける。
「言う気になった?」
「いじわるです!」
何をいまさら。
ミソノがコノエに近づいて耳を向けると、掠れるように小さな声で確かに彼は言った。
ここまでして、ようやくであった。
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