こげくさい愛をあげる 4
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「あなた、今日は嫌に意地が悪いですね」
「…そう?」
実のところ、ミソノは拗ねていた。
ミソノの機嫌が余り良くない事に気がついたのだろう。
コノエは怪訝そうに何があったか聞いてくる。
懐から時計を取り出しその時計盤を眺めながらミソノはぽつぽつと口の中で、非常に言いにくそうにしながらも言った。
「…君の帰りが、遅かったから」
仕事であった事は、知っている。
連絡もなしに来たのは悪かったなぁ、とも思っている。
それでも、意気揚々と家へ来てみれば迎えはなし。
合鍵でもって上がりこみ勝手に待たせてもらったが待てど暮らせど愛しい恋人は帰ってこない。
やっと帰ってきたと思ったその時刻は朝方に近い時間であった。
午前様!朝帰り!!
自分がいかに理不尽なのか判ってはいるが、ちょっとくらい意趣返しをしたってよいのではなかろうか。
コンセプトは如何にして素直じゃないコノエに自分からしてくださいって言わせるかだ。
変な方向にプライドの高い彼から求められた事は、ミソノの記憶に無い。
一回くらい…むしろ毎回くらいあったっていいじゃないか。
薬まで使わないといけないのかと思うとちょっと落ち込むが。
息を詰めるような気配がコノエからしたが、彼は何も言わなかった。
だから、ミソノも何も言わず時計盤だけを眺める。
コチコチと秒針が揺れる。
あまり居心地がよいとは言えない空気の中でコノエが唸るように声を洩らした。
彼はこういう空気が嫌いだ。
それでも敢えて何も言わず無表情で時計盤を眺める。
針が何度回っただろうか。
そろそろ薬も回ってくる頃合だ。
ミソノ自身も体の芯が熱くなってきている。
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