こげくさい愛をあげる 3
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「な、に…?」
「僕持参のチョコレート」
「甘さ云々言ってた割りに、すごい苦いのですが…」
さっき、チョコレートは甘い方がいいとか言ってなかっただろうか。
息を整えながら間近にある顔を窺ってみると、それはそれはよい笑顔をして言い放った。
「薬入りだからね」
なにそのお約束。
チョコレートでころころ遊びながらチョコレートは滋養強壮がどーとか言った上で薬入り。
薬の種類など、もうわかりきったものではないか。
「チョコレートの良いところは、どんな毒が入ってても解らないところだよね。ちょっと毒に味があってもわからない」
コーヒーもだけれども。
「あなたが入れるのは毒じゃなくて変な薬でしょう。なんて事してくれるんですか」
キッとミソノを睨み付ければ、彼は目を瞬かせた後に苦く笑った。
「君は僕が毒なんて入れないって信じてるんだね」
どこまでもお人よしの恋人だと、ミソノは思う。
毒なんて盛って、そんな事して何になるのだとコノエの視線が語っている。
信じられるという事は心地よい。
ふと、この恋人そのものこそが毒ではないだろうかと思う。
なんて、中毒性の高い毒。
毒がどうこう言ったが、もちろん盛ったのは媚薬。
大半はコノエの中に納まったがミソノ自身も飲んでしまったそれは、緩やかに体を熱くしていく。
実際に効き始めるのはもう少し経ってからだけれども、媚薬を飲んだという事実が気持ちを煽ってそれが体に反映する。
コノエもその様で、熱の篭もった息を吐いて熱の篭もった目でもってこちらを見上げてきている。
それでも呆れた様にため息を吐いてコノエは言う。
「せめて、布団でお願いします」
「何を?」
しれっと聞いてやるとコノエは目を見開いて、次いで嫌そうな顔をした。
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