真昼の夢 1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「ほらグレイシア、早く座りなよ」
ソファーに座ったブラッキーが、満面の笑みでそう言う。
言われても僕は、二人分のマグカップを手に持ったまま、立ち尽くしていた。
どうしてってかって?
そりゃあ…。
「ブラッキー、どうして僕は君の膝の上に座らなきゃならないのかな?」
彼が座れ、と要求しているのは自らの膝の上。
さもそこに座るのが当然のように。
「いいじゃないか。君と会うのは久しぶりなんだから」
このところ、すれ違いの生活が続いていた。
一緒に住んでいるわけだから、全く顔を合わさないとかそういう訳じゃないけど、ゆっくり話をするとかそういう時間はなかった。
朝、ちょこっとその日の仕事の愚痴なんか言い合ったりして、朝食を食べたら二人で飛び出す。
帰ってきたらもう夜中で、どちらかが先に帰っていれば、その隣に滑り込んで眠る。
そんな感じ。
お互い忙しいんだよね。
「寂しかったんだからな」
そんな風に真剣な口調で言われてしまうと、僕もぐっと言葉に詰まる。
何考えてるんだよ僕たちはもう子供じゃないんだぞ大体僕だって軽くはないんだし。
頭の中ではいろんな言葉がぐるぐる回ったけど、結局そのどれも口には出せずに、マグを片方ブラッキーに手渡すと、そのまま彼の膝に腰かけた。
途端にマグを持っていない彼の手が、僕の腰を逃がすまいとがっちりと回される。
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