短編&Cherry | ナノ




些細な原因1


ピンポーン。


部屋中に鳴り響いた呼び出し音。
時間帯なんてお構いなしの音量は眠気が漂う頭に悪い。

(明日から寝る前にサイレントにしておこう)

もう時刻は日付が変わる直前。
迷惑な悪戯を楽しまないで欲しいと切に願う。
たぶん誰も映ってはいないモニターをとりあえず見れば。

「スミレ、ちゃん…?」

悪戯目的とはほど遠そうなあの子が立っていた。

「スミレちゃん、いま開けるね」

『…ん』

応答を手短に切り上げてオートロックを解除。
不鮮明なモニターの映像、だけど、そこに映るあの子の表情は明らかに曇りがあった。
今夜の空のように分厚い曇。
そして、かぼそい光の星のような、消えそうな声。
良くない兆候ぞろいだ。

あの子に何かが降りかかったのか、あの子が何かをしたのか。
彼女は知っているのだろうか、あの子がここに来ていることを。

それとも、彼女があの子をここに来させた原因なのか。

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