ロコンとイーブイ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・アーサーさんのおうちには、2匹の同居人がいます。
いや、同居人ではなく同居獣。
1匹は茶色のふかふか毛並みのイーブイ。
もう1匹は6本の尻尾のつやつや毛並みのロコン。
2匹は同時期に生まれて、同じようにすぐに親が居なくなって、アーサーさんが2匹まとめていっしょけんめい世話をしたから兄弟のようになかよしです。
イーブイはイーフ。
ロコンはロルフとなまえがつけられて、2匹は元気いっぱいにアーサーさんのおうちの中で育ちます。
アーサーさんも、可愛い2匹を危険なお外へなんて出せません。
2匹とも、死にそうだった自分達を育ててくれるアーサーさんが大好きだったからそこに特に不満はなかったし、アーサーさんのおうちのお部屋はなんだか無駄に広かったので(だというのアーサーさんは1人暮らしだ。)2匹は生まれてからこのお部屋から出た事は無かったのですが運動不足になる事も無く元気に過ごしました。
『ただ、ロコンってすげぇパワフルなのな…』
がくり。
お仕事から帰って来たアーサーさんは、お部屋の惨状を見てがくりと力なく項垂れました。
おろおろとした調子のイーフが、アーサーさんの足元でその柔らかな身体を摺り寄せ何かを訴えます。
「あーさーさん、ろるふさんをあんまり怒らないでください」
それに気がついたアーサーさんはイーフの頭を優しく撫でてくれます。
イーフはアーサーさんの優しい手が大好きだったので、ついうっとりとしてしまいます。
『イーフはいい子だなぁ…イーブイのが暴れるんじゃないかと思ったんだけど、性格かなぁ…あーもー…ロルフ!』
部屋のど真ん中ではロルフがどんなもんだと言わんばかりにティッシュ箱のティッシュを引き千切り、箱に喰らいつきぼろぼろにした挙句後ろ足でげしげしとトドメを刺した所でした。
「あ!あーさー!!」
ぴょこぴょこと、ロルフはアーサーさんの前にぼろぼろにしたティッシュ箱を自慢するように見せ付けました。
「見ろ!おれの勝ちだ!!このうちの平和はおれがまもるんだぞ!」
ティッシュの何に害意を見出したというのでしょうか。
きらきらと瞳を向けられてアーサーさんはぐっと詰まってしまいました。
怒らなきゃ、怒らなきゃ、怒らなきゃ!!
「だから、あーさーは安心してお仕事にいっていいんだからな!!」
言葉が通じるわけは無いのですが、きらきらとした目でボロに成り下がったティッシュ箱を誇らしげに見せてくるロルフにアーサーさんは今日も怒れずに、空ろな目でロルフの頭を優しく撫でるのでした。
『…お前は凄いよ。凄いから、頼むから、手加減してくれ…』
撫でられた事で気をよくしたロルフは、そうやって毎日毎日頑張ってしまうのでした。
END.
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