短編&Cherry | ナノ




リアルな夜の夢 3


しかしスターミーは予想を裏切りひどく真剣な顔付きで俺を見て言ったのだ。


「…あなたとふたりだけで、来たかったんだよ」


どきりとするような、低い声だった。


「…もちろん、昔からみんなと来るのはとても楽しかったよ。だけど私は、スピアー、あなたと二人だけで、こうしてここで星を眺められたら、どんなに素敵だろうって、いつも考えていたの」


耳の奥が、遠く、無音になったようだった。
それなのに、スターミーの声は静かに俺の鼓膜を揺らした。
彼女は俺を見上げ、優しく微笑んだように見えた。


「ずっと、そんなふうに願っていたの」


――どくん、と心臓が響いた。


胸を突かれて、それでなにも言えずに、俺は彼女の微笑をじっと見た。


「……スターミー……」


ようやく搾り出すような声で呼んで、傷付けないよう優しく彼女に触れた。


「…俺も、願いごとを、していたんだ。…二つあるんだけど、一つはもう叶った。スターミーと、同じ」


例えば。
夜、ふたりでこっそり同じ空を眺められたら。
きみが微笑む様を、俺だけが、そっと独占できたとしたら。
それはどれだけ素晴らしいことだろう…。


幼い子供心に、俺はそんな願いを、抱いていた。

きみが微笑むたびに。

ずっと。



「そう…」


くすくすと笑って、スターミーは俺を見上げる。


「不思議ね、こんなにも長い間そばにいたら、考えかたも似るのかなあ」


そうして、怖いくらいに優しい目をする。



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