リアルな夜の夢 1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・星を見に行こうよ、と誘って来たのはスターミーのほうだった。
その日はとても気持ちのいい晴れた夜で、確かに星を見るには絶好の日和であった。
「裏山の頂きに、小さな原っぱがあったでしょ。昔よくみんなとそこに行って、星を見たよね」
覚えている?と尋ねられて、俺はああそんなこともあったなぁ、と思い出した。
俺たちがまだまだ小さかったころ、よく夜中に抜け出しては色々なところへ遊びに行った。
大抵は近場の川か、せいぜいが裏山で、それでも親の目を盗んで抜け出すのはとても刺激的だった。
そんなささやかな冒険も、大きくなるにつれて自然になくなってしまったのだけれど。
「ねぇ、久しぶりにあそこへ行ってみない?」
そう言って、スターミーがどこか弾んだ様子で俺を見た。
もちろん、スターミーの誘いを断る理由なぞ俺にはないので、すぐに大きく頷く。
「いいよ。行こう。月見ならぬ、星見と洒落込もうじゃないか」
久方ぶりに通る道は、意外なくらい記憶に残るままだった。
変わったのは、景色に対する目線の高さくらいなものか。
この道を歩いたあの頃の俺はまだビードルだった。
知らない間にずいぶん成長したものだと、俺は不思議な気持ちになった。
スターミーも。
あんなにあどけなかった背中が、今やなんと頼もしく俺の前を行くことだろう。
「懐かしいね」
ほとんど独り言のように、スターミーが呟いた。
ああ、と俺も頷く。
懐かしい。
この道を、何度も辿った。
いつだって彼女は俺の隣にいた。
友人たちとの秘密の冒険に頬をばら色に染めて楽しいね、と微笑む幼い彼女に、俺は小さな胸をときめかせて、微笑み返す。
そうだ。
思い出した。
あのとき、俺はいつだって、こう思っていたのだ――
← | →
[
TOP ]