短編&Cherry | ナノ




笑顔を届けに来ました5


「一件落着、かな」

すっかり冷たくなった僕のミルクティーを入れ直す後ろ姿に笑いがこぼれた。
あーあ、シュガーは1杯だけっていつも言ってるのに。
3杯なんて甘すぎるんだよね。
甘党なあの子にはぴったりの甘い甘いミルクティー。

「スミレちゃん仕様だね」

小さく背中に呟けば、

「スミレちゃんがなに?」

しっかり耳に届いてるんだから驚きついでに本当の事を言ってしまいそうだよ。

「別に、スミレちゃん実家に帰ってるのかなぁ…って」

「実家以外だったら絶対に謝らない」

「案外クウヤのところだったりして」

「やめてよトールちゃん、冗談でも涙が出る」

「あはは、情けないなぁ」

だけど、そこまで中心軸がはっきりしてると羨ましいよ。その人がそこに在ること。
振り回される、それってきっと幸せなんだ、彼女にとって。

「甘い」

「え?」

「甘すぎるよ、ナギ」

「そう?」

僕が手に持ったミルクティーを見て、口許を緩める。
この笑い、もしかして…。

「トールちゃんも3杯でしょ?」

自分もカップを手に取ってニッコリと微笑んだ。

「なんのお礼返し?」

「たまには甘いのもいいと思うよ、糖分摂らなきゃ」

「もう充分だよ」


明日になったらキッチンにまた並び始めるんだろうな。
色違いな2つのマグカップ。

「ノンシュガーも必要だよ、たまには」

ブルーの水玉を優しい瞳で見ていたこの幼なじみが、なんだか急に大人にみえた。


END.

100401

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