短編&Cherry | ナノ




糖度はごく高め5


健全なる男子学生の友人を思い浮べ、ムツはくすくすと笑った。
バレンタインは男子も女子も楽しくさせてくれる。
チョコレート会社の陰謀にしては、なかなか良いイベントだよな、と改めて思っていると、ふいに目の前に何かが差し出された。


「…んっ?」

「チョコレートです。ハッピー・バレンタイン」


悪戯な笑顔を浮かべてリードが言った。
見れば鼻先にあるのは、綺麗な焦げ茶の包装紙に包まれた長方形である。


「…リード君、から?」

「美味しいですよ、それ。有名な店のバレンタイン限定商品ですから。ムツ君好みの味ですよ」

「う、うん…」

「どうせムツ君はバレンタインでもチョコレートのことは忘れてるだろうと思いましてね。俺から、大好きなムツ君にプレゼント。どうせ男同士なんですからどっちからでも良いでしょう?」

「じゃ、じゃあなくてっ!」


慌てて席から立ち上がると、リードが不思議そうに首を傾げた。
まったくこんなときばっかり格好よく決めてくれる恋人である。
ムツは些か悔しい思いになりながら、右手に持ったままだった紙袋をリードに突き出した。


「忘れてなんか、ないよ」

「え?」

「俺だって、用意してるんだから」



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