糖度はごく高め4
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…結果から言えば、チョコレートは成功した。
いや、うん。そうだ、ちゃんとあれは、成功したと言えるはずだ。
食べても苦いところより甘いところのほうが多かったし、少々度が過ぎている感は否めないものの、ちゃんとトリュフらしく柔らかくなったし。
だから断じて失敗などではないはず。
ムツは、これまたおおざっぱにチョコを入れた青い紙袋を片手に、そう己を励ました。
日付はバレンタイン当日。
時刻は放課後、午後五時十五分。
「そろそろかな…」
学級委員会議に出払ってしまったリードを待ちながら、ムツはぼんやり窓の外を眺めていた。
教室に残っていたクラスメイトたちは既にどこかへ消え去り、窓から見える中庭にもちらほらとしか人がいない。
バレンタインだし、みんな一目のつかない場所へ行っているんだろうな。
先ほどから三組ほど初々しい場面を目撃してしまっているムツは、そんなふうに思った。
「ムツ君、お待たせしました」
聞き慣れた声に後ろから名前を呼ばれ、ムツは廊下のほうを振り向いた。
会議が終わったらしく、資料ファイルを脇に抱えたリードがこちらに向かってくる。
「さっき、レイが後輩からチョコ貰ったって騒いでましたよ。まー義理チョコでしょうけど」
「バレンタインだもんね」
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