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糖度はごく高め2


今回も、本当に「女の子は大変だなぁ、努力が報われるといいなぁ」「バレンタインはみんなが楽しそうでいいなぁ」「十五日にはチョコが安くなってたら嬉しいなあ」としか考えていなかったのだろう。

しかし、ムツとてひとりの恋人を持つ身である。
さらにその恋人にはいやに夢見がちなところがあるゆえ、きっと今回もムツからのチョコを期待して勝手に待ち焦がれているに違いないのだ。

レイはそんなムツの恋人が気の毒になって、なんとかムツにチョコを用意させようと考えた。


「なあ、ムツ。一応リードにチョコあげたら?」

「うーん、でも男からもらって、リード君喜ぶかな?」

「いやいや、二人とも付き合ってんでしょ。ってか、リードはたぶんムツからのチョコしか喜ばないと思うよ」

「そうかなぁー。だけど男がチョコ買いに行くのって、なんか虚しい図じゃない?」

「自分に買うわけじゃないから大丈夫だよ。それに最近は逆チョコってのもあるんだよ。全然、あやしくないから」

「そっかー」


ムツはそれでもしばらくは悩んでいたが、結局レイに流されたのだろう。
うん、と頷き、明るく笑ってみせた。


「そうだね。リード君にはいつもお世話になってるし、こんなときくらい良いよね」

「そうそう」

どうやらチョコを貰えなかったリードが、自分や友人たちに何かを言ってくるような事態は防がれたようだと、レイは安堵の笑みをもらした。


「今日にでも駅前で買ってくればいいよ。あんまり、どれにしようか悩まないでさ。無難にトリュフとかが良いと思うよ」

「うん、うん、ありがとうねレイ」


ムツがにこにこと礼を述べるのに、レイもつられて嬉しくなる。


「じゃあ、そろそろ俺帰るよ。バイバイ、ムツ」

「うん、バイバーイ」


手を振り、背中が見えなくなってから、ムツはひとりつぶやいた。


「チョコレートかぁ…」



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