短編&Cherry | ナノ




不治の病に等しいの3


「…グレイシア」

おれはそっとグレイシアの傍らに膝をついて、今にも折れそうな兄の肩を抱いた。

「ごめん。グレイシアの気持ちも考えずに。でも良かったら聞いてほしい。あいつは隣のクラスの学級委員で、ただ仕事について話してただけなんだよ。おれ、グレイシアの弟として胸を張れる男になりたいから、だから仕事も一生懸命頑張ってるんだよ。そうでもなきゃ、あんなクソ女と誰が話すもんか。おれはグレイシアのものだから、当たり前だろ。グレイシア以外いらない。グレイシアが世界で一番で、唯一だよ。グレイシアが言うならおれ、あいつとも二度と話さないから、だからもう泣かないで、グレイシアが泣くのは辛いんだよ」

「……う、うぅ…」

「グレイシアがいないと…おれなにも出来ないんだから…グレイシア…愛してる、知ってるだろ…」

「……、」

グレイシアが、涙に濡れた瞳をわずかに覗かせた。
唇が小さく動く。


「…ほん、とう…?」

「勿論だよ」

にっこり笑って頭を撫でてやれば、グレイシアはようやく落ち着いたように肩の力を抜いた。
そして、両腕をおれの首にのばしながら、「じゃあ、いい」と優しい声で言う。

「ブラッキーがぼくのものなら…良いよ。お仕事、頑張って。あのこと話してもぼく構わない」

「…いいの?おれは別に…」

「良い。ゆるしてあげる」


…ああ!
おれは感動に胸を内震わせた。

なんて、グレイシアは優しいんだろう!
こんなに心の広い兄は世界広しといえどグレイシアだけであろう!

おれは心からの愛を込めて、グレイシアを抱き締めた。

「ふふっ…くすぐったいよ、ブラッキー…」

すぐ耳元でグレイシアの息が触れるのに腹の奥がぞくぞくする。

「グレイシア…愛してる…」

「っあ、ぶ…ぶらっきっ…」

抱き締めたまま兄の身体を床に押しつける。いきなり弟にのしかかられて、グレイシアは戸惑いの表情を浮かべた。



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