完成の終わり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・様々が散りばめられたキャンバスに向かい合い、神様の存在を一身に感じる。
この絵は未だ不完全。
「絵、完成したの?」
「完成?…うん、そうだね。」
一ヵ月ほど前から色が頭に降り注いで、筆を握らずにはいられなくて、遂に製作に取り掛かったのが七日前、それから食事も侭ならず一心不乱にキャンバスに向かった。
そんな俺を見ていて心配した幼馴染はここ毎日、俺の家に来て、軽い食事を運んでくれたり、水を与えてくれたり、夜が訪れたことを教えてくれた。
そして今日。
遂に不完全が完成した。
「ねぇ、君はこの絵、どう思う?」
「…私は絵には余り精通してないんだけど」
「俺は君の言葉が聞きたいんだよ」
陽に当たる優しさに包まれたなら確実に何かを感じて、その何かを感じている自分は自分でしかなくて、俺は自分の存在を信じるしかなくなった。
そして自分は完全ではない、それは感じた何かを上手く表現出来ない情けない自分からも明らかで、目の前に広がるキャンバスでさえ、今すら感知している。
自分の不完全を知っている。
これはとても不思議なことだと思う。
不完全を認識出来るということは、俺は完全を知っているということになるだろう。
しかし未だかつて俺は完全を目の当たりにしたことは、少なくとも俺のちっぽけな記憶の中では、の話だが、なかった。
生まれながらにして埋め込まれている輝かしい完全の姿、あなたは神様だろうか。
惑わされる、心乱す。
「…私は、」
「うん」
「欠点だらけでも、私なんかに自分の絵を見た感想を求めてくる、あなたのそういうところを羨ましく思うな」
「はは、なんだよそれ。君結構失礼だよ」
所詮、いつまでも完全にはなれないのだ。
ならば不完全こそが完成。
俺はこの未熟な自分と歩いていくしかない。
色だらけのキャンバス、創作。
創作は模倣から始まるというけれど、ならば最初の創作は何だろう。
やはり神様が七日で仕上げた、この青い球体だろうか。
こんな奇跡みたいな世界には足許も及ばない、神様と同じ時間をかけてもそんなものしか俺には創れない。
仕方が無いね、無力だね。
あぁお腹が減りました。
美味しいご飯が食べたいです。
幼馴染が俺の頬についていた絵具を指の腹で拭った。
END.
091122〜100331までの拍手文
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