短編&Cherry | ナノ




子供めいた自己主張4


「本より私を見てっ」


私の口から飛び出したのは、恋愛ドラマに良くあるお決まりのセリフ。

相手が恋のライバルじゃなくて、本ってのが少し情けないけど、ガーディを魅了するこの本は私の立派なライバルだ。

さっきまでずっと、ガーディをとられていて。

どうしようもない悲しさと寂しさが怒りを通りこして、目の前にいるはずのガーディがぼやけて、見えなくなった。


「せっかく傍にいるんだから、構って……」


それは紛れもない本心で、どうしようもなく素直で剥き出しの気持ち。

涙が瞳から溢れて、喉の奥から小さく嗚咽が漏れて行く。

声を押さえようとする度に肩が震えて、涙が溢れてはまた浮かぶ。

涙を見せるのは悔しくて、顔を両手で覆って目を閉じた。

その両手の隙間から、溢れる涙。

何だか、悔しい……



「ロコン」


視界が遮られた中から、ガーディの声が聞こえる。

私を呼ぶこの心地良い声は、心配そうなこの声は、私の悲しみを乗り越えて心に染みる。



「ごめん、やりすぎた」



(…………は?)


人が少し憂いを含んだ感情に浸っているのに、この人は一体何を言い出すのだろう。

私は思わず心の中で間抜けな声をあげて、うつ向くのを止めてからガーディを見つめる。
涙は驚きで止まってしまった。



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