青空の下1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・天気の良い昼休み。
早々と食事を済ませ、屋上までの階段を1人駆け上がる。
陽が差し込んだ階段の踊り場で一旦足を止め、透明の硝子部分からドアの向こう側を覗くと、柵に手をもたれかけ、白煙を纏った先生の姿があった。
そっとドアを開きその背中に忍び寄る。
保険医のアブソル先生が昼休みに屋上で一服するのを知ったのはつい最近。
なんでも、保健室で煙草を吸ってる所を教頭先生にみられてこってり絞られたから、とか。
(屋上でだってダメなのに。)
でも、そんな先生らしくないとこが、スキ。
だから、昼休みに屋上へ足を運ぶのが最近の私の日課なのだ。
「だーれだっ!」
そっと忍びよってそのまま両手で先生の視界を塞ぐ。
少しくらいびっくりするのを期待してたのに、先生はそんな素振りなんて一切みせてはくれなかった。
「…煙草持ってんだから危ないでしょ」
「もぅ先生!せっかく誰だ、ってやったんだから答えてくれてもいいじゃないですかぁ」
「…そんな事やる子、決まってるからね」
「誰ですか?」
「…あんた以外誰がやるの?」
そう言って手に持っていた煙草を口に加え、空いた手で未だ先生の目を塞いでいた私の腕を掴み、離す。
私の腕を掴んだまま振り返った顔には、少しだけ笑みが浮かんでいた。
(そんな顔ずるい。)
握られた手から一気に熱を帯びて、顔まで真っ赤になっていくのがわかる。
なのに先生はそんなの気付かないフリ。
(やっぱり、ずるい。)
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