短編&Cherry | ナノ




隠せない嫉妬心3


「キライじゃない、その程度がちょうどいいの」

折り目通りに折る手元を見つめていると、そんな小さなつぶやきが聞こえた。

「スミレちゃん?」

「出かけてくる」

コンパクトになったその新聞をローテーブルに置き、立ち上がろうとソファから離れてゆく彼女の手を、私はとっさに掴んだ。

「怒ったの?」

「え?」

「だって、急に出かけるなんて言いだすから」

「本屋に行くだけよ」

「じゃあ私も一緒に」

行く、と言い終わる前にぐっと手を引っ張り私を切り離す。


「ナギは留守番」

「やっぱり怒ってる?」

「どうしてそう思うのよ?」

淡々とした口調が雨のように頭上に降る。

「キライじゃない、私がそう言ったから」

「だから私が怒ったって?」

「う、ん…」

少し不安そうに私を見た瞳。
ホントに私も悪趣味ね。

綺麗なその瞳を揺らせては罪悪感にかられるのに、揺らせてみたいと思う欲望に時には勝てないでいる。
これじゃ変態か。
怒らせて当然。



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