隠せない嫉妬心2
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「今日は1日雨だね」
冷蔵庫から牛乳を取り出して、パックを持つ手が残量を考えると、そのまま口へとパックを直接運んだ。
「ちょっと、また…」
行儀悪いことを、と非難の視線が注がれる。
中身の残りが少なくなったパックやペットボトルは決まって直接口を付けてしまう、これはもう癖というか習慣。
育ちが良い彼女にとってはさぞ行儀が悪く映るのだろう。
「たまにはこうやって飲むのも美味しいよ?」
「味は変わらないでしょう」
「変わらないけど、なぜか美味しく感じるんだよね」
「あなたの舌がおかしいのよ」
そう言いながら彼女は呆れたように視線を新聞に戻すけれど、口許と目許は柔らかい。
「ねーえ、スミレちゃん」
彼女が座るソファの端に軽く腰をかけて、横顔を覗き込む。
「私のこと好き?」
まるでチョコレート好き?と聞くみたいにフランクな質問を口にする。
彼女は横目でチラッと私を見た。
またくだらない事を…。
そんな意味合いの視線が遠慮なく降り注ぐ。
「キライじゃないよ」
仕方なさそうにつぶやかれるその言葉。
普段ならばそれを聞けるだけで満足してる。
だけど、今日は彼女を機嫌良くさせる雨に少し妬けてしまうから。
そして彼女の強がりを壊したいという私の悪趣味が、口にする必要がない言葉を口にさせてしまう。
「私もキライじゃないよ、スミレちゃんのこと」
見つめてくる瞳が揺れ動いた。
いつもならば「好きだよ」と素直に伝えるのがお決まりで、うるさがられるほど「好き」をささやく。
でも今日は彼女と同じような表現をしてみたくなった。
言葉を変えて伝えることで彼女がどう反応するのか…ただの意地が悪い好奇心。
彼女の瞳はずっと私を捕らえたまま動かない。
私の中の何かを探ろうとしているのか、それとも自分の中で何かを探しているのか。
ゆっくりと瞬きをしたあと再び新聞へと視線を戻した彼女は、少しだけ記事を流してガサッと紙面を折り畳み始める。
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