短編&Cherry | ナノ




種明かし禁止2


「ナギは祭り好きのただのバカよ」

「誰もナギだなんて言ってないわよ、身近な人のこと」

にっこり笑ってスミレを見れば、しまった、と一瞬だけ眉間を寄せた。

そんな珍しい表情を見てしまったあたしとしては、もっと楽しみたいと思うわけで。

「スミレ、少し早いけど」

体を前に乗り出してスミレの耳元に唇を付ける。

クリスマスプレゼント、ね。

とびきりの甘い声に艶を混ぜた吐息。
これで堕ちないやつはいないってやつ、シュナスペシャル。


「っ……!?」

横に大きく、素早く仰け反った彼女は信じられなさそうに、耳元に手をあてながらあたしを見つめる。

あーあ、ナギには勿体ないなぁ。
奪いたくなる。

なにも知らない少女のような初々しい反応に、胸がキュンとした。

不埒なことばかりしてたあのナギが改心した訳が、何となく解る気がする。
心を改めさせるほど、ナギにとってスミレは神聖な存在。
付き合ってもう1年は経つのに、きっと本格的に手は出せてないはず。

「スミレ、ナギへのクリスマスプレゼントに貞操あげれば?」

「シュナっ!!」

バンッ!と勢い良く開いたドアと共に叫び声がリビングに響いた。
立っていたのはケーキ屋さんのショップ袋を手にする更正した彼女。

「お帰り、ナギ」

「お帰りじゃないでしょ!?スミレちゃんに変なこと言わないでよ!」

「変なこと?手助けよ、ナギの、キッカケがあったほうがいいでしょ、ね?スミレ」

「え、あ、わ、私は別に……タイミングが、合えば……」

急激にフェードアウトされた声と、耳先まで赤く染めた俯くその姿にまた胸がキュンとする。

隣に並ぶ彼女は同じように、それ以上に胸が揺さ振られたらしい。
鼻の下が伸びるってこういう事なのかしら。

「スミレ…」

だらしなく緩んだ顔がだらしない声でだらしなく名を呟く。
カサカサとショップ袋を揺らせる抑制の手。

やだやだ、ホントやだ。
あんなに手が早かったナギがときめくなんて。



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