些細な原因7
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・『ここを出る前に本人が壊していった残骸がいま目の前にあるよ』
「それは気の毒だ、世に出て間もない携帯が」
『これで9台目だよ?いっそ持たなくていいんじゃないかって思うよ』
「それでも、あの子が持つのはナギが望むからでしょ?」
あの子はこの彼女が望むコトを否定し、拒絶しながらも、最後には受け入れる。
それは妥協とは違い、あの子なりの…。
『クゥちゃんはいつもスミレちゃん寄り思考だよね』
「そうかな?自分では中立的なつもりだけど」
『じゃあ無意識?それはそれで大問題だけど』
「片付けなきゃいけない大問題ばかりだね」
『ホントもう抱えきれないよ…だからスミレちゃんに伝えて』
急にトーンダウンした真摯な声。
呼吸を整えるようにゆっくりと一拍置いて、
『君しかいらない、愛してる』
普段の彼女を知る者が聞いたらバカバカしくて笑ってしまうほど、あまりにも真面目な発言。
それほど彼女もまた、あの子のすべてを求めてる。
「そう伝えたら、あの子はソコへ戻れるの?」
笑って、君の元へ戻れる?
『スミレちゃんも、私しかいらないはずだから』
もう一度、彼女の真剣な声と、その声に隠された想いが飛んできた。
電波で伝わる想いも悪くはない。
対面だと今の君は重すぎるから。
俺も客観性を失いそうだよ。
電話の進化に感謝だね。
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