些細な原因5
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2つのカップにインスタントコーヒーを目分量で入れながら昨夜の事を思い出す。
客人にソファで寝かせるわけにはいかず、寝室を譲ったとはいえ、やはりあの子が安眠できるはずもなく。
何の役にも立たなかったベッドは決して寝心地がいいとは言えないが、それがもし高価であっても、俺が寝ていたソファであっても、なにひとつ役に立たなかったことは変わらないのだろう。
小さな鍋にコップ2杯分の水を入れようとして、目に映ったのは使用済みのグラスとカップたち。
あの子が来るまで自分が使っていたモノを合わせて3つ。
シンクに並んだまま。
コップは多めに購入しておいて正解だった、とふと思う。
「スミレちゃん、シュガーは?」
「ミルクだけで」
「風呂は?」
「え?」
「風呂、入るなら用意するけど」
「ううん、いいよ」
「帰ってから、入る?」
「あー…う、ん」
手渡したカップに注がれる彼女の視線が揺れた。
戸惑うことを知っていて追い詰めてしまうのは…自分らしくもない他人への干渉からなのか。
「スミレちゃんは、今日は昼から?」
「うん…あ、クゥちゃんは?午前から?だったらゴメン、長居して」
「いや、それは別にいいんだけど、ゆっくりできるなら風呂入っていけば?」
「でも…」
「気分転換、なるよ」
後押しすれば迷いある顔が緩まって、「じゃあ、お言葉に甘えて」とあの子らしい返答が返ってきた。
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