Tali inspiegabile2
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・第五実験、しばらく放置してみる。
………。
「奏さー、何これ」
「ちょっ!勝手に人の見んなし!」
肩から覗き込む昂輝を押し退けて、自身の体で覆いかぶさるように奏が紙の束を隠す。
珍しく慌てた様子に、昂輝はきょとんと首を傾げた。
「実験?猫?」
「あぁもう煩いし!昂輝くんには関係ないし!」
怒鳴りながら散らばる束を必死にまとめる奏の、ほんの僅かな隙をついて。
「あ!」
「何々、猫……箱?」
「か、返すし!」
更に深く首を傾げた昂輝の手から、引ったくるように紙を奪い返した奏が、赤い顔で睨み付ける。
殺気すら交じったその瞳。
けれど昂輝はけろっとした表情で奏を見て。
「なんか分かんないけど、蓋開けてみたら早いんじゃない?」
「はぁ!?」
それが出来ないから、と言い掛けた奏より早く。
「早く出してあげなきゃ、生きてるものも死んじゃうよ」
(生きてるものも…?)
心の中で呟いた奏の言葉に昂輝がくすりと笑った、気がした。
* * *
「なぁ、悠、」
「あ、奏さ、最近俺の事無視してたでしょ!」
「そんな事より、私のこと好き?」
「当たり前でしょ!なんで今更………ってえぇぇ!?!?」
実験結果。
猫は生きていた。
だが猫・実験者共に体、主に心臓あたりに異常発生。
しばらく二人の休養が必要と思われる。
END.
101202
(箱の中の猫=シュレーディンガーの猫)
奏の「悠」呼びに違和感。
でもそんな距離だと言い張る。
そんな距離ってどんな距離よ。
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