Liebesbrief2
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・手元を覗き込み何も書かれていない便箋と私の顔を行ったり来たりしながらとても不思議そうな顔をする。
「ラブレターを、書こうと思ったんだし」
「へえ?」
どうしたの、と問われる前に答えればますます何故?と問い掛けるような視線を寄越してくる。
「だけど、文面が思い付かない」
そこで彼はなるほど、と頷いてぽんと手を叩く。
そうして彼はいつものように迷う私に答えをくれる。
「きっと文は向いていないんだよ」
あっさりと言い切ってしまった彼の言葉に容易に納得してしまった。
書けないという事はそういう事なのかもしれない。
私はああ、と間抜けな声を出してしまった。
出すつもりなんてなかったのに。
ちょっとだけ恥ずかしがる私を気にすることなく、彼はまっさらな便箋を手にとってくしゃくしゃに丸めてしまった。
「奏は文よりも直接告げる方が性にあっているよ」
「まるで私の全てを知っているような言い方だし」
「だって、その通りでしょう?」
丸めた便箋を放り投げると吸い込まれるように屑籠の中へと消えていった。
時同じくして天気雨も止んで青空だけが淡々と広がっている。
隣りに座る彼の気配以外は何もかもが穏やかに過ぎていく。
「で、誰にラブレターなんて書こうとしたの?」
余裕を装っているつもりだろうがそんなものが実はないことなんてお見通し。
飼い犬を宥めるように頭を撫でるとつん、と右上がりの唇が尖ってしまった。
こういうところが素直で可愛くて好きだな、と思いはしたけど口にして伝えることは多分一生、この先ないのだろう。
横から伸びた腕が私の体を捉えてしまう。
すぐ傍にある温もりは私に似ているから心地好いのか、それとも似ていないから心地好いのか。
もう少しだけ苛めたくて、もう少しだけゆうと一緒に居たくて私はとぼけた振りをして少しだけ意地悪をしてみせる。
「さあ、どうしようか、言おうか言わまいか迷うんだけども」
END.
伏線とか私には無理過ぎた。
でも楽しかった…!
110307
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