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Arroz pelota1


はい、ゆう。
そう言って差し出された美味そうおにぎりたちに、俺はぽかんと口をあけた。
交互に見るのはぴかぴか輝く白米と、それを持ってきた奏の顔。
時刻はすでに日付を変えている。


「かな…これは?」

「んー?ゆう、仕事まだ終わらないんっしょ?お腹空くだろうと思って作っておいたんよー」

照れたように頬を掻く奏に、俺は感動で胸が熱くなるのを覚えた。
そんな、まさかあの奏が、俺のために夜食を用意してくれていたなんて…!
そう思うと、今の今まで面倒臭さと憎しみしか感じられなかった仕事の書類まで、急に輝いて見えるから不思議だ。

「時間がたっちゃったから、ちょっと固いかもしれんけど」

「そんな!すごく美味しいよ!」

「まぁ私だから当然だしー。あっ、お茶もあるんよ」

そう言って奏が茶の入った椀を渡してくれる。
その甲斐甲斐しい様子、まるで夫婦みたいじゃないか?そんなことを思いながら少し苦い茶の味を噛み締める。
ああ、なんて幸せなんだろう…。


「あ、そういえば」

椀に残った茶をすべて飲み干したとき、俺はふとあることを思い出して声を上げた。
奏がなにと言う顔で俺を見る。

「そういえば、前にもこんなことがあったよね」

「前にも…?」

「そう。夜更かしをした俺に、奏がおにぎりを作ってくれたこと」

「…うーん、あったっけ?」

奏は見当も付かない様子で首をひねる。
そんな彼女に向き直り、俺は知らず知らず思い出し笑いを零していた。

そうそう。すっかり忘れていたけど、確かあれは。

「あれは、俺たちがまだ小さかったころ…」

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