Buchty4
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・雫ちゃんの瞳が誘惑に揺れ、光乃くんが得意げな笑みを浮かべる。
「だからここは奏の気持ちを汲み取って饅頭を食べようか」
「う…こ、これはおいしい話…」
「ちょっと待ったそこの2人!」
すべてが解決しそうになったそのとき、私の背中に張りついていたゆうがやかましく叫んだ。
「どうして奏が饅頭を譲った挙げ句、そこにおまけが付くんだ!話がおかしいだろ!」
「あっ、ゆうは黙ってるしっ」
「はっ…、確かに…私としたことが…!」
雫ちゃんが我に返ったように頭を振る。もう!あと少しでうまくいくところだったのに!
「余計なことを言うなし、悠」
「俺は奏のためを思って言ったんだけど?」
「だから私のためを思うなら雫ちゃんにお饅頭を食べさせてやるべきだし」
「でも奏が食べたがってるのに雫ちゃんに食べさせるのは奏のためじゃないでしょ?」
「ああもうややこしいし!」
なんだか何もかもが面倒くさくなってきた。
当初の目的もわからなくなって思わず私が頭をかかえた、そのとき。
「…おまえら何してんの?」
耳慣れた声が頭上に振ってきて、私は顔を上げた。
「あ、昂輝くんっ!」
「みんなでよってたかって何してるんだよ?喧嘩か?」
「いや喧嘩じゃないんだけど、それが昂輝くん、かくかくしかじかで…」
「はー、なるほど。小説は便利だ」
うんと頷き、納得したような素振りを見せたあと、昂輝くんは「それなら」と人差し指を立てた。
「話は簡単だな、みんなで分ければ良い」
「は?」
なにを言ってるんだ、お饅頭は一個だぞ、という周囲の視線も意に介せず、昂輝くんは持っていた袋を差し出しなんだなんだと注視する私たちへ満面の笑みを見せる。
「はい、プクリンさんにもらった饅頭」
嬉しそうに昂輝くんが差し出した袋の中にはお饅頭が四つ。
「外に出てたら子供たちの面倒見てくれって頼まれてさー、それでみんなで食堂に行ったらおやつにってくれたんだ。いっぱいあったからおまえらにもやろうと思って」
そう言う昂輝くんに、私たちはお互い顔を見合わせた。
「…っぷ、」
「っはは!あはははは!ありがとう昂輝くん!」
「え、なに?なんで笑ってんのさ」
「なんでもないない、じゃあ饅頭ちょうど五個あるから、みんなでわけようか」
「賛成!昂輝さんありがとうございます」
「ありがとな、昂輝」
笑いながら昂輝くんの肩を叩くと、当人は不思議そうに「なんで?」を繰り返していて、私たちはそれにまた笑った。
「それじゃあまあとりあえず」
「頂きます!」
END.
110307
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